« キング・オブ・コメディの神髄ここにあり!英流青春コメディの醍醐味“すれ違いの笑い”与田ちゃんも思わず水を吹きかける!?ジェスチャー大喜利シーン解禁!『ぐらんぶる』 | メイン | 『ワンダーウーマン 1984』黄金に輝くゴールドアーマーをまとった最強戦士 ワンダーウーマンの必殺技、“ガントレット・クラッシュ”に大興奮!激アツなバトルを予感させる場面写真解禁 »

2020年8月 4日 (火)

奇跡レベルの学園アンサンブルコメディ セクシャリティ、多様性…女性の目線を通して新たに見える2020年代の青春映画のスタンダード 山崎まどか&トミヤマユキコトークイベント『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

0804_006


オリヴィア・ワイルド初監督作『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を8月21日(金)より全国公開となる。『her/世界でひとつの彼女』『リチャード・ジュエル』の女優オリヴィア・ワイルドが、 “俺たち”シリーズ、『バイス』のウィル・フェレルとアダム・マッケイ製作総指揮の下、華麗に映画監督に転身。これまでになく大胆でパワフルな青春コメディは、SXSW映画祭を熱狂させ数々の映画賞を席巻。また、監督、脚本、主演の全てが女性主導という作品にテイラー・スウィフト、ナタリー・ポートマンら多くのセレブが絶賛と支持表明したことも大きな話題となり全米を熱狂させた。驚異の満足度97%!史上最高の爆走青春コメディがこの夏、ついに公開。この度、配給ロングライドと『アメリカン・スリープオーバー』『キングス・オブ・サマー』など日本で未公開だった傑作青春映画の上映企画などで近年、映画ファンから熱い注目を浴びる団体グッチーズ・フリースクールがコラボし、2回にわけてオンライントーク配信イベントを開催。 第1夜は「新世代のフェミニズム映画について」。昨年の女子映画大賞に本作をあげ、「ランジェリー・イン・シネマ」ほか多くの映画に関する著書を執筆するコラムニストの山崎まどかと、日本の文学、マンガ、フードカルチャーに関する連載を持つ一方、大学では少女マンガ研究をメインとしたサブカルチャー関連講義を担当するライターのトミヤマユキコを招き、トークイベントが実施された。


まずこの映画を観た感想について、トミヤマは「主人公ふたりが本当に最高で、自分も高校生からやりなおしたい(笑)。彼女たちは勉強しかしてこなくて、素敵!キラキラしている!というわけではないけど、見終わる頃には強烈に「二人のような青春を過ごしたかった」と感じた。唯一無二の親友であることがきちんと証明されて終わるところもよい。親友とはこういうものだと思えた。」とコメント。山崎は「男の子や女の子の二人組の青春映画はこれまであったけど、ふたりだけにしかわからない異様なテンションのノリだったり、絶妙なボンクラ感だったり、説明はないのにそれぞれの背景が見えたり、こういうキャラクター造形の映画は今までなかった。主人公エイミーとモリーのイタいけど、愛おしい。当初、脚本になかったそうですが、エイミーはレズビアンという設定。カミングアウトするまでに焦点を置いた物語は多いけど、本作の彼女はカミングアウト済み。でも、女の子とつきあったことがない。これまでの映画だといわゆる童貞の男の子が抱えているようなダサさが、女の子の視点で描かれているのが良かった。」と語る。


主人公ふたりの関係性についてトミヤマは「2人だけにしかわからないノリがあり、それで互いをチアアップできのであれば、周りの人が見えなくなるのはよくわかる。だからこそ、その殻を破って卒業パーティーに行くというのがエモーショナルに感じられる。それと、エイミーはカミングアウトしているけど、好きな子には告白できないという引っ込み思案さとのバランスが絶妙でチャーミング。カミングアウトする勇気と、好きな子に告白する勇気は別、という描かれ方も今までになくて、面白いと感じた。」と現代の若者を繊細に捉えたキャラクターの魅力について話す。


山崎は本作の製作総指揮ウィル・フェレルとアダム・マッケイの制作会社の姉妹会社、グロリア・サンチェス・プロダクションが本作を制作していることについても言及。「もともと女の人の映画をつくることを目的に立ち上げられた会社で、最近だと『ハスラーズ』やNetflix『ユーロビジョン歌合戦』がここの制作。単に女性の比重を増やすとか、男がやっていることを女がやってみるとかではなく、とても質の高い作品の中でそれを実践している。アメリカの青春映画では定番の卒業前夜の馬鹿騒ぎを、女の子2人を中心に置くとこんなに面白く、新しくなるのかと思いました。脚本家の4人が全員女性で、今まで描かれてなかったことが描かれている面白さがあると思う。」と分析した。


さらに『スーパーバッド』など青春映画にはつきものの下ネタについて、山崎は「ちょっと前まではタブーだった、女子のマスターベーションなどの描写が最近のアメリカ映画だと割とOKなことになっていて、本作でもそのことが笑いも交えて、とても自然に描かれている」と語り、トミヤマも「男性観客へのサービスになっていないし、湿っぽくなりそうなところが脚本と演出のうまさで、カラッと描かれていて、しかも笑える。日本の青春映画にも、この描き方は見習ってほしいし、これからのスタンダードになればと思う。」と本作ならではの女性のリアルな性の描かれ方について、新鮮さを感じたようだ。


山崎はエイミーとモリーの部屋に細かい意匠が凝らされているのも見どころとしてあげ、「ふたりはフェミニストだけど、モリーは女子をエンパワーメントするリーダーシップを目指していて、エリート志向。ミシェル・オバマ、ルース・ベイダー・ギンズバーグの写真が飾られてる。対してエイミーは、文学少女。ヴァージニア・ウルフの「自分ひとりの部屋」タイトルが部屋のドアに張っていたり、文学に関するポスターがあったり。キャラクターを形作る細かい部分にも意味が込めれられていてそれを知るともっと面白い」と解説。トミヤマも「山崎さんのこの解説を聞いてから観るともっと楽しいはず」と彼女たちの部屋のアイテムなどからキャラクターの個性を紐解く隠れた楽しみを熱く語った。


また、セクシュアリティだけでなく、話題は登場する多様な人種のキャラクターに。山崎は「最近よく映画のポリコレに関する指摘を見るが、この映画の場合は、ポリコレでもなんでもなく、舞台がLAであることが大きい。10年前の統計だと、48%がヒスパニック系、11%アジア系、9%が黒人。その人種構成をリアルに反映している。」と話す。そんな中でも、気になるキャラについて、トミヤマは「ジジ(ビリー・ロード)が最高!富豪の女の子で、エキセントリック。主人公のふたりに匹敵するくらいのキャラが立っている」と熱く話す。山崎は「アンサンブルコメディが成功するか否かは、全てのキャラクターが有機的に動いていて一人として余計な子がいないかが鍵。『ブックスマート』は奇跡的に全キャラがうまく描かれていて、アメリカの奇跡レベルの学園アンサンブルコメディの一本。ジジもモリーもすごく良いし、観終わったあと自分のクラスメートを思い出すはず。いそうでいなかったキャラといえば、ホープ(ダイアナ・シルバーズ)のバッドガール!今までの青春映画だと『恋のからさわぎ』のヒース・レジャーや、『ブレックファスト・クラブ』のジャド・ネルソンみたいな役。ひどいけどモテる男の子。これを女子がやると新鮮で、いじわるだけど好きになってしまう、すごく魅力的だった。」と振り返り、日本でのこういうタイプの女性の描かれかたについてトミヤマは漫画の「ちひろ」を紹介しつつホープ役を絶賛。また山崎はモリーについて「実は彼女自身も、他人に対してすごく偏見がある。周りのクラスメートは勉強してなくて、つまらない人生を送ると思い込んでる。それが、皆と交流することで見えてくるようになる。“こんなに近くにいたのに君のことをよく知らなかった”というジョン・ヒューズの学園映画から根底にあるテーマが本作にも流れている。『ベイビー・イッツ・ユー』のジョン・セイルズの言葉に“高校はアメリカの最後の民主主義社会だ”という言葉があるが、高校は色んな階層の人と関わりあえる最後の場。卒業というそのラストチャンスで、モリーとエイミーにはみんなと分かり合える機会があった。それがこの映画で描かれている奇跡だと思う。彼女たちがどう変わったのか、その変化が最後に出てきてとても感動的だった」と語る。トミヤマも「たった一晩でみんなのイメージが変わり、相手を見るときの解像度があがる。しかも、それが不自然でなく描かれているのは、脚本と演出の力だと感心した。」とキャラクターたちの関係性と絶妙な描かれ方について着目。


多種多様な生徒が登場する昨今の学園映画について、今年話題となったNetflix配信中『ハーフ・オブ・イット』を引き合いに出し質問されるとトミヤマは「『ブックスマート 』が好きな方は絶対『ハーフ・オブ・イット』も観た方がいいと思う。ひと昔の前の感覚だと、アメフト部、チアリーディング部が学園ヒエラルキーのトップだというイメージを植え付けられている。でも、本作や『ハーフ・オブ・イット』のキャラクターたちは、そういう分かりやすさを排除して、絶妙にイケてなかったり、イケていても欠点があったり、みたいなグラデーションの中で描かれている。いい面もあれば、悪い面もあるみたいなリアルなバランスを丁寧に描いていて、そういう描き方をできるクリエイターが増えているのは頼もしい。『ブックスマート』でもそうだが、女の子の描かれ方が変わると、それに付随して実は男の子の描き方も変わっていくので、それもとても良いところだと思う。女の子2人の物語だけど、男の子が女の連帯にとっての邪魔者として扱っていないのは、この映画の絶妙に素晴らしところだなと思うから観て欲しい」とコメント。

山崎は「人間はコンピューターじゃないので、アップデートという表現ではなく、目が良くなる、トミヤマさんも使っている“解明度”が良くなっているという言葉が正しいのだと思う。学園映画の中でも様々なキャラクターが登場してきて、今まで見えてなかったものが見えてきている。本作は特にそれを主人公のエイミーとモリーの目を通して、わかってくる。」また、生徒だけでなく、山崎はジェシカ・ウィリアムズ演じるミス・ファイン先生に共感できるポイントがあったことを話すと、大学の講師をされているトミヤマも「校長先生、女性教員の描き方も、本来なら脇役的に扱われてもおかしくないところを、キャラクターとしてある程度の解像度で描かれていて、先生のこともちゃんと好きになれる。オリヴィア監督の夫に校長先生役を頼んだのも最高だった(笑)」と、ご自身の立場から見る大人たちのキャラクターの魅力について語り、まだまだ熱く語りたい空気のなか惜しくもお時間となりトークイベントは終了した。

____________________________________________________________

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

2020年8月21日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開
配給:ロングライド
公式HP:https://longride.jp/booksmart/
(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。




最新映画ナビ関連ブログ

最近の記事