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2019年7月24日 (水)

堀潤が肌で感じた、映画には映らない背景を語る『風をつかまえた少年』公開記念特別試写会 堀潤登壇トークイベント

日時:7月23日(火)
場所:映画美学校試写室
登壇者:堀潤(ジャーナリスト/キャスター) 馬野裕朗(公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン プログラム部 部長)

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世界23カ国で翻訳されたベストセラーを第86回アカデミー賞作品賞受賞『それでも夜は明ける』主演のキウェテル・イジョフォーが初監督した『風をつかまえた少年』が、8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国公開となる。ジャーナリストとして、世界各地の難民キャンプや貧困地域を取材してきた堀潤と、教育プロジェクトでの初めての出張国としてマラウイを訪れて以降、幾度となくマラウイを訪れ、現地を肌で知る国際NGOプラン・インターナショナルのプログラム部部長、馬野裕朗を招き、本作から紐解く、マラウイの文化や伝統、さらに世界における教育、貧困などの問題について、実体験を通し幅広いテーマで語った。


満席の場内で大きな拍手に迎えられながら、堀と馬野が登場。以前にも取材で対談したことのある二人からにこやかに挨拶が交わされた後、トークイベントはまず、本作を一足先に鑑賞したご感想からスタート。

堀は「未来を作ってくれる新しい世代を、上の世代が押さえ込んでしまうのか、未来を信じて託せるのかということが描かれている。僕らの普段の日常にも近い、世代の分断による閉塞感というか。それは先進国特有かというと実はそんなことはなくて。プラン・インターナショナルさんの現場を取材させていただいた中でも、女の子は生まれた時からこれをやる、男の子はこれをやる、家父長はこうだ、母親はこうなんだ、という状況がある。そんな中で、どんなふうに自分たちの価値を変えていくのか。決して上から目線ではなく、一緒に模索しながら知識のインフラとして根付いていくということが、描かれている映画。先進国が学ぶべき課題解決策が込められていると思う。」さらに、「原作は、ウィリアムさん本人と、元AP通信の記者(ブライアン・ミーラー)の共著。本来のジャーナリズムのあり方である、まず現場があって、それを拡散させていくことや、イメージや言葉にならないものを共有する責任というのを感じた。すごくいいタッグで出来上がった作品なんだと分かりました」と、本作の元となる原作が生まれたきっかけを同じジャーナリストとしての視点で感じたことを語った。

また、馬野からは「映画の中に出てくる『今日からご飯は一回にします』という言葉。私は、実際にアフリカのエチオピアやジンバブエで村の人たちが話すのを聞いた。その度に、胃がぎゅっと締め付けられるように苦しかった。飢餓はいきなりパッと起こるものではなくて、じわじわ真綿で首を締められるような苦しいプロセス、命の危険を感じるところまで焦ってくる緊迫感、そういったことがウィリアムさんのチャレンジの背景として描かれている。辛いけれどぜひそこを観て感じて欲しい。」 と、自身の実体験を思い起こしながら熱を込めて語った。


続いて話題は映画でも様々に描かれていた、人々の中に生まれる“チャレンジを抑圧するような空気”について。「声をあげるのはとても勇気がいることですよね。ウィリアムさんは、本当によくくじけずに風車をたてることができたな、と。プラン・インターナショナルさんは頑張ろうとしている人に対してのどのように精神的なサポートをされているんですか?」という堀の質問に対し、馬野は、「大事なのは、自信を持つこと。例えば、力を入れている女の子の支援でとくに言えることですが、パキスタンで識字率が20〜30%の地域では、文字が読めるようになることが小さな自信になる。さらに、親や周りの人から『女の子も教育を受ければこんな凄いことができるようになるんだ!この手紙を読んでくれない?』と言われる、それがさらに大きな自信につながるんです。」それに対し堀は、「自己肯定感をどうやって育むのかがキーワードですね。これは開発国、先進国、問わずに。その実績作りを周りがどうサポートできるのか、評価をしてくれる仕組みや人をどうやって用意するのか、そういった部分においてNGOの活動は重要ですね。映画の中でも、ウィリアムが成長していく過程や、自信が確固たるものにどうやって変わっていくのかというのが見どころです」と映画の背景にもつながる支援の側面からも力を込めて語る。


途上国での女性の活躍について馬野が「この映画で、お母さんが重要な役割を果たすように感じています。飢饉に向かってだんだんと食べ物がなくなっていく過程で、誰がどういう状況で判断を下すのか、その点にぜひ注目してほしいですね。」と観客に呼びかけると、堀も、「ヨルダンの難民キャンプで取材をしていたのですが、男性たちが大きな理想を掲げながらも疲弊していく中、女性たちは、身近な誰かを守るための具体的なアクションをとり、目の前の成果を丁寧に積み上げていく。性差によるものはあまり語りたくない一方で、やはりそういった特性は感じたというか。ジェンダーギャップにおいても、日本や先進国も実はすごくロスをしていると思いますね。多様性っていうのもこの映画にすごく含まれていると思う。性別や、世代など、地域がもたらしてきた分断をどのように乗り越えていくのか。そういった観点でも意味を持つ映画。」と堀ならではの踏み込んだ視点で指摘した。


さらに、本作の主人公である14歳の少年ウィリアムや、子どもという存在について尋ねられた堀さんは、「希望でしかない。我々は、『大人は知っていてこどもは知らない』という関係性を築きがちなので、最近心がけていることは子どもたちの目線で『みんなが知りたいことや知らないことをおしえてくれないかな?』という聞き方をすること。すると、一見突拍子がないような答えが返ってくることもあるが、その手があったか!というアイデアが生まれたりする。」すると馬野さんも、「堀さんがおっしゃることに大賛成!20年近い途上国での仕事の経験で、キーワードは、『お互いにどんな違いがあっても、等しく同じ目線で尊重しあって対話すること』だと思います。それによって学びがたくさんあります。」堀さん「フェアであることってイノベーティブですよね。」と大きく頷き合った。


また、本作から得られた学びとして堀さんは、「マラウイの“絶対的貧困”と日本のような“相対的貧困”の国の課題は違うのでは?という問題提起がありますが、未来を描きづらい、何が欲しいのかが自分でも分からない、というのが先進国の課題である一方、何を必要としているのか、未来が明確なのが開発国だと思いました。ただ、やっていることは一緒なんですけどね。 欲しい未来を誰かに説明できるくらい、自分とコミュニケーションがとれていだろうか?ウィリアム君は、どうすればいいのか考え続け、模索してするために教育の機会を強く求める。そういった、『ビジョンを誰かに伝えられるか』ということも、彼の中に大切なアプローチとして見出しました。」とも語った。


また、教育プロジェクトでの初めての出張国がマラウイで映画に映る当時の姿を知る馬野さんは「独裁政権が終わって、それまでは服の着方まで制限されるくらいだった状況から解き放たれた、開放的な空気はありましたが、飢饉が迫りさらに輪をかけて大変だったのがエイズで2002〜3年の平均寿命は40歳を切ったという暗い環境で、10代後半から20代の将来を担う人たちが亡くなっていく、という状況でした。 現在は50歳にまで回復しましたが。」と映画では描ききれない当時の過酷な状況について明かすと、堀さんは、「本作でも、教師の覚悟や働き方って出てきますよね。教育機会をどうやって確保するのかが課題だなと。取材したシリアでも、先生たちが亡くなってしまって、難民キャンプでも先生を確保するのが大変で。教育の技術がないばかりに威嚇的に負の循環が生まれてしまうという…。いかに教育の足場を確保するかということが難しいか感じました。そのような長いスパンで国の足場を支えるという意味でいうと、僕らの国はどのような支援ができるのでしょう。」さらに続けて、「マラウイという遠くの離れた国についても、例えばGoogleで検索すると、日本政府のODAで、水の確保であったり様々な支援が行われている。それは僕らの税金が基になっている。実はすごく繋がっているんだと気付けたり。我々が伝えていくことでも、そういう機会を共有したいですね。」と締めくくり、映画では描かれない背景が大いに語られた貴重なイベントは、大盛況のもとに幕を閉じた。

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『風をつかまえた少年』

2019年8月2日より ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開
配給:ロングライド
公式HP:https://longride.jp/kaze/
(C) 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC

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