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2018年6月22日 (金)

『告白小説、その結末』 ロマン・ポランスキー オフィシャルインタビュー

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昨年のカンヌ国際映画祭に正式出品された鬼才ロマン・ポランスキー監督最新作『告白小説、その結末』が、6月23日よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開となる。ロマン・ポランスキー監督のインタビューが到着した。


『告白小説、その結末』は、制作発表からわずか1年でカンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映を迎えましたね。この作品にどのように関わっていかれたのですか?

妻のエマニュエルから、デルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説を手渡され、「この小説を読むべきよ。これは映画にできると思うわ」と言われました。彼女の言った通りでした!私は版権を保有しているプロデューサーのワシム・ベジに連絡し、2016年のカンヌ国際映画祭の数日前に初めて会い、それ以来、すべてが信じられない速さで展開していきました。


原作小説のどこに惹かれましたか?操縦、支配、監禁、サスペンスといった要素が含まれるこの物語は、あなたにうってつけだと言えるのではないでしょうか。

登場人物たちと、彼らがいつの間にか陥っている奇妙で不安な状況に最も惹かれました。これらのテーマは、以前に『反撥』や『袋小路』、『ローズマリーの赤ちゃん』で取り組んでいます。また、『ナインスゲート』や『ゴーストライター』と同じく、本についての物語だということがとても面白いと思います。これは、たまたま物語を動かすきっかけになった物事、つまりわたしにとってのマクガフィンです。この小説のおかげで、ふたりの女性同士の対立を掘り下げるという素晴らしい機会に恵まれました。私はここから始めるべきだったのだろうと感じました。これまでに、ふたりの男性同士や、男性と女性の対立については度々描いてきましたが、女性同士の対立を取り上げたのは、今回が初めてです。


小説では、リアリティとフィクションが合わせ鏡のような関係で魅力的に描写されています。『毛皮のヴィーナス』でも、エマニュエル・セニエが演じるキャラクターは、現実なのか、ゲームを楽しんでいるのか、またはフィクションなのか、はっきりとは分かりませんでした……。

その通りです。このテーマには、とても興味をそそられます。


それは、何故ですか?

分かりませんし、何故なのか考えることもありません。この曖昧さというものに本能的に惹かれるのです。興味深いことですが、『毛皮のヴィーナス』は私の監督作品のなかではめずらしく、女性が犠牲者になりません。


オリヴィエ・アサイヤスが脚本を担当していますね。彼がこの作品に参加した経緯を教えてください。

オリヴィエが監督した直近の2作品は、女性を描いています。私は彼の作品を熟知していますし、彼がほかの監督作で素晴らしい脚本を書いていることも知っていました。ですから、彼は速やかに見事な脚本を仕上げてくれると信頼していました。


彼と一緒に仕事をした感想はいかがでしたか?

オリヴィエは、500ページもある小説を脚本にする方法について、とても明確でシンプルなビジョンをもっていました。見事な熟練技です。大抵、私たちはスカイプでやりとりし、飽くことなく意見交換をしました。


仕事が早いことに加え、オリヴィエは脚本に、具体的に何をもたらしてくれましたか?

オリヴィエが小説の主旨を把握した後、ふたりでどのような脚本を作りたいか話し合ったところ、お互いの意見がぴったり一致していることがわかりました。かつてビリー・ワイルダーは、「脚本の書き方を知っていることは、監督にとって重要なことですか?」と聞かれたとき、「いいえ。でも、読み方を知っていれば大いに役立ちます」と答えています。


本作は、原作の小説に驚くほど忠実ですね。


脚色をするときは、原作に忠実であるようにいつも努力しています。これは、子ども時代の体験が原因だと思っています。好きな物語の映画版を観て、がっかりさせられることが度々ありました。とても楽しみにしていたのに、いざ作品を観ると、大好きなキャラクターが登場していなかったのです。物語も同じではありませんでした。そんな経験から、もし、映画制作に携わり、脚色をすることがあれば、原作に忠実であろうと心に誓ったのです。
この本が特に面白かったのは、作家の苦しみが描かれていた点です。作品を生み出したあとのね。それは本でも映画でも同じことが言えます。ほかの芸術作品でも原作小説に描かれた感情は真に迫っていて、それは、作者自身が感じたことだからです。


最初から、エマニュエル・セニエを作家役にすると考えていたのですか?

初めは、どちらの役がエマニュエルに向いているか迷いました。でも、脚本を書き始めると、彼女は作家役にぴったりだということがすぐに分かりました。ですから私たちは、相手役である不安を掻き立てるような人物を探さなければなりませんでした。


相手役にはエヴァ・グリーンがすぐに頭に浮かんだのですか?

はい。映画を観れば、その理由が分かります。面識はありませんでしたが、彼女の一連の出演作を知っていました。ロバート・ロドリゲス監督の『シン・シティ 復讐の女神』での彼女の演技に感動しました。エヴァとの仕事は、素晴らしい経験でした。でも、エヴァとエマニュエルのふたりと組んだことで、さらに素晴らしい経験ができたと思っています。俳優同士の相性はいつも良いとは限りませんが、ありがたいことに、エヴァとエマニュエルの相性は初めから抜群でした。


生活をともにする女性を演出することは大変なのでしょうか?

一緒に生活することよりも楽ですよ(笑)。驚いたことに、ふたりの女優はどちらも準備万端でした。彼女たちは、撮影中にもまだ私たちが変更を加えていた脚本を部分的に受け取っていました。エマニュエルとエヴァはプロに徹していて、優れたアイデアを多数出してくれました。特にエマニュエルは、これまで演じた役から離れ、キャラクターを構築することに関心を寄せていました。


エマニュエルとエヴァが、似ている点と違う点を教えてください。

普段、エヴァは無口で控えめなので、仕事がやりにくいのではないかという印象を抱かせるところがありますが、まったく違います。彼女はオープンで、決して不満を言わず、とても聡明でした。脚本に描かれている機微や、自分に要求されていることをきちんと把握していました。本当に、エヴァとエマニュエルのおかげで、短い撮影期間にも関わらず、素晴らしい撮影ができたのです。


撮影期間はどれぐらいありましたか?

12週間です。とても大変な撮影でした。


どうして大変だったのですか?

リハーサルの時間が取れなかったので、実際に撮影しながらそれぞれのシーンを見極めていかなければなりませんでした。女優ふたりだけのシーンは、互いを相手に演技できるので難しくありませんでした。でも、デルフィーヌひとりだけが登場するすべてのシーンでは、何も動きがないところで観客を惹きつける方法を考えなければなりませんでした。細部にまでこだわり、特定の雰囲気を作り出す必要があったのです。私は頭の中ではその雰囲気をとても詳しく描いていましたが、それを具現化するのにとても長い時間がかかりました。主演のふたりだけで、ほかには誰も来ない誕生日のシーンも同様です。単調で退屈になることなく、時間が経過していることを表現しなければなりませんでした。ひとつの部屋に、登場人物がふたりだけのシーンで時間の経過を見せることは簡単ではありません。特に、私たちはクロスフェードを使いたくなかったので、余計に難しかったのです。


本作はナレーションを使用せず、小説と同じく一人称で語られています。演出、映像、そしてエヴァ・グリーンの演技に対するあなたの指示を通してこの物語の核となる現実とフィクションの間のミラーゲームを描写していますね。

それが監督の役目ではないでしょうか。正にそこが本作の課題でした。私たちは、キャラクターにアンビバレンスを見せる必要があったのです。心を揺さぶる演技に不可欠な要素のひとつで、観客に疑念や不安を抱かせます。ちょうど、子ども時代に見た人形劇のショーを思い出します。子どもたちは恐怖と喜びを同時に感じて動けなくなったものです。物語はいつも恐怖と期待を織り交ぜながら展開していきました。大人向けにこの感覚を再現することは楽しかったです。観客の皆さんも満足してくれることを願っています。


階下の住人、本の編集者、そしてデルフィーヌの恋人フランソワといった脇を固めるキャラクターたちは、あなたが監督・主演した、これもまた辛辣なノワール作品『テナント/恐怖を借りた男』の登場人物たちを彷彿とさせます。

多少はそうかも知れません。でも、正直なところまったく考えていませんでした。『テナント/恐怖を借りた男』をカンヌ国際映画祭に出品したことは、苦い思い出ですから。プレスに酷評されましたし、ジェラール(ブラッシュ/脚本)が体調を崩しました。長い年月を経て、漸くこの作品はカルトクラシックと言われるようになりました。

本作のスタッフ陣は、“ドリームチーム”ですね。撮影は『戦場のピアニスト』以来組んでいるパヴェウ・エデルマン、音楽は『ゴーストライター』以来仕事をしてきているアレクサンドル・デスプラが担当しています。

映画への愛を共有する者たちの集まりです。私たちは息がぴったり合っています。長年組んでいると、考え方が同じになり、全員が先の展開がわかるので仕事がしやすくなります。私たちの会話はとてもテクニカルで、見るだけで分かり合えることもあります。例えばパヴェウとは、映画フィルムのフォーマットについて話し合うだけです。私たちは、閉塞感から抜け出すために、スコープで撮影することにしました。本作は、親密さよりも、対立、支配や操縦に苦しむ姿をより多く描いています。スコープで撮影すると、可能性が増し、いくつかのシーンを開拓することができます。


アレクサンドル・デスプラには何か指示をしましたか?

まったくしていません。脚本を渡し、映画について私の構想を説明しました。予想外のことが起きるサスペンスに仕立てたかった。私は度々会話のなかで擬音を使いますから、彼と何を話したかは説明しにくいです。「ここのシーンは、ウーッ!という感じになるんだ」という様に。


デルフィーヌの恋人のフランソワ役に、ヴァンサン・ペレーズを起用されたのはなぜですか?

友人であるヴァンサン・ペレーズと組むチャンスが来るのをずっと楽しみにしていました。フランソワ役には、デルフィーヌ・ド・ヴィガンの実生活での恋人である、文学ジャーナリストのフランソワ・ビュネルに似ている人を選びたかったのです。すぐにヴァンサンのことが浮かびました。彼に会うと、即答でこの役を引き受けてくれました。彼は、このキャラクターが求められている優しさとつれなさのバランスのとり方を瞬時に掴みました。


デルフィーヌ・ド・ヴィガンとお会いになりましたか?

もちろんです。オリヴィエと脚本作りを始めてから、すぐに会いました。そして、撮影の終盤にも会いました。私たちは、実際の“パリ・ブックフェア”でブックフェアのシーンを撮影したかったので、2017年3月まで待ちました。会場では、主催者がデルフィーヌ、オリヴィエ、そして私を読者たちとの座談会に招待してくれました。とても温かい歓迎を受けました。会場には参加者がたくさんいて、彼らに、この本を読んだことがあるか尋ねたところ、3分の2の人々が手を挙げました。そのほとんどが女性です。デルフィーヌ・ド・ヴィガンは、女性たちに語りかける物語を書いたのです。そして彼女たちのために映画を制作できたことに、私はとても満足しています。


映画でもすばらしい作品を生み出したあとは苦悩しますか?前作を越えるために何をしようかと?

毎回のように、次はどうするべきか悩んでいます。私がデビューした時代は1年に1本は撮っていましたが、今では3年に1本撮れれば幸運な方です。映画制作が困難な状況ですし、年齢のせいもあります。思い切った決断ができないのです。
若い頃のことを思い出します。私は時々キューブリック監督と電話で話していたんですが、彼はこんなことを言っていました。「次回作までの時間が嫌いだ」「何をしていいか分からない」「人生における最悪の時間だ」とね。その時、私にはその意味が分かりませんでした。私も30代の頃は簡単に決断できていましたから。でも今は彼の言葉が身に染みます。

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『告白小説、その結末』

2018年6月23日よりヒューマントラストシネマ有楽町・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公式HP:https://kokuhaku-shosetsu.jp/
(C)2017 WY Productions, RP Productions, Mars Films, France 2 Cinéma, Monolith
Films. All Rights Reserved.

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