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2017年12月15日 (金)

映画『ビジランテ』入江悠監督インタビュー

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2009年の『SR サイタマノラッパー』で鮮烈な印象を残し、その後、インディーズ作品からメジャー作品までさまざまな作品を手がけてきた入江悠監督。この入江監督が自身のルーツとも言える埼玉県深谷市で撮影を行った映画が『ビジランテ』(2017年12月9日公開)だ。大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太という日本映画界を代表する三人の名優を迎え、土地や家族の呪縛の中でそれぞれの生き方を貫こうとする三兄弟の姿を描き出した。『ビジランテ』の公開を前に、入江悠監督にインタビューを行った。

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本作『ビジランテ』は監督がオリジナル脚本を手がけられた三兄弟の物語ですが、この物語をどこから着想されたのかを教えてください。

■入江悠監督:15年前くらいに自警団の物語を映画化したいと思ったことがあったんです。『SR サイタマノラッパー』の前なんですが、脚本を書こうと思って書けなかったんですね。それで今回、その自警団の物語と三兄弟と組み合わせようと思ったのが最初です。


なぜ自警団という題材に興味を持たれたんでしょうか?

■入江悠監督:もともと学校とか会社とか、集団生活が苦手なんですよね。人が集まって何かをするということに集団の抑圧のようなものを感じてしまうんです。ただその一つの象徴のような自警団に、逆に興味があったんです。


近年の日本映画にはない骨太な雰囲気、韓国のヤン・イクチュンといったような作風に近い雰囲気を感じました。地元に根ざす土着の物語を描きたいというような意識があったんでしょうか?

■入江悠監督:土着の物語を描きたいというのはありましたね。自分の地元でルーツを見つめようと思って『SR サイタマノラッパー』という映画を撮影したのが2007年くらいで、ちょうど10年くらい前なんですよね。それでそのあとはいろいろな商業映画やテレビドラマなどを撮っていました。その間は、オリジナルの脚本で自分のルーツを見つめるという作業をしてこなかったんで、一旦原点に帰って自分の地元やコミュニティを見つめ直したいというのがありました。


三兄弟を大森南朋さん、鈴木浩介さん、桐谷健太さんが演じていますが、なぜ彼らをキャスティングされたのかを教えてください。

■入江悠監督:脚本を書き上げた後でプロデューサーとキャスティングについて相談していて、上がってきたのがこの三人だったんです。三兄弟それぞれに自分の分身のような部分を託したんですよね。僕が持っている弱さや、憧れ、理想像なんかをそれぞれに反映しました。


それぞれ、監督のどういう部分が反映されているのでしょうか?

■入江悠監督:大森南朋さんが演じた一郎というのは、しがらみを切って地元から逃げて、都会で一人で生きていくということを選択した人間ですよね。地元が嫌で逃げたという、地元との関係性や距離感の取り方を一郎に託しています。
鈴木浩介さん演じる二郎は、僕の弱さとずるさを反映しています。年をとっていくとしがらみが生まれてくるじゃないですか。社会だったり家族だったり兄弟だったり。その中で二郎は一番人間関係のめんどくさいところを引き受けざるをえない立場にいる。だからこそ、本音と建前を使い分けて生きざるを得ないという、ずるさと弱さがあるんです。


二郎役の鈴木浩介さんの表情が本当にいいですよね。抑えた感情が漏れ出てくるような、本当に弱さとずるさが滲み出していました。

■入江悠監督:鈴木さんは映画にあまり出られたことがないとおっしゃっていたけれど、すごくいい俳優さんですよね。この映画の中では一番揺れるキャラクターで、自分にとって一番大切な物は何かという瀬戸際に立たされる難しい役なんですけど、やりすぎずに抑制された演技で見せてくれました。


桐谷健太さんが演じる三郎には、どういう部分が託されていますか?

■入江悠監督:三郎は一番かっこいい存在ですよね。三男で末っ子なので、ある種しがらみから逃れて気持ちのいい生き方をできるというか。桐谷健太さんの存在感も含めて、僕にとっての理想の生き方を彼に託しているという部分がありますね。


三郎が実の父親を拒絶しながら、デリヘル嬢たちの父親のような雰囲気で擬似家族を作っているのが興味深かったです。

■入江悠監督:父的なものを拒否しているんだけれど、いつかは引き受けなくてはいけないものが家族であり、人とのつながりだったりするので。三郎も知らず知らずのうちにそういうものを引き受けているということですよね。


デリヘル嬢役の女優さんたちは、実際に共同生活をしていたそうですね。

■入江悠監督:スタッフと相談して、埼玉県の深谷市で合宿生活をしてもらったんです。東京から通うにはけっこう時間がかかるので、一緒の空間で寝起きしてもらったほうが関係性も近くなりますし。彼女たちには細かく演技指導したりしていないんですけど、撮影に入る前に関係性がある程度できていたので、自分たちで考えて演じてくれましたね。彼女たちは何百人の中からオーディションで選んでいるので、それぞれのキャラクターにあった演技をしてくれました。


俳優さんで言えば、二郎の妻役の篠田麻里子さんの演技も印象に残りました。映画女優然とした佇まいを感じましたね。

■入江悠監督:そう言っていただけるとうれしいです。僕は普段リハーサルをやらないんですが、彼女と二郎の家族のシーンはリハーサルをしっかりやったんですよ。彼女自身も「演技というものにちゃんと向き合いたいのでリハーサルをできるだけやらせてください」とおっしゃってたんで。裏と表を使い分けないと生きていけないという役柄で、その部分はほとんどセリフで説明してないんですけど、彼女の芝居が説得力をもたせてくれました。


あともう一人、若い自警団員を演じた吉村界人さんのキレた演技も素晴らしかったです。

■入江悠監督:彼とは別の作品で会ったことがあって、前から知っていたんです。オーディションをしていると扉を開けて入ってきた瞬間に「ああ、この人はすごいな」と感じる俳優さんがいるんですが、彼は完全にそのタイプですね。ある種の天才肌だと思います。目力だったり、天性の勘だったり、このセリフはどういう声のボリュームでしゃべったらいいかなど、そういうのが自然にわかる俳優なんです。これからが楽しみです。


今作で監督が一番描きたかったシーンはどこになりますか?

■入江悠監督:やはり川のシーンですかね。『太陽』という映画を撮ってから、川とか橋が好きになって、絶対に入れようと思っていました。川っていうのは地域を分断する存在だし、ある意味とてもシンボリックなんです。渡る人間と渡らない人間、彼岸と此岸のような意味合いもありますし、映画にとって一番大事なシーンですね。撮影半年前くらいから川面の様子や、どこを渡ったら安全かなどのリサーチをしました。夜の川は撮影が本当に大変なんですよね。前半と中盤と後半、大事なところで出てくるんですが、作品を象徴するシーンになりました。


撮影で一番大変だったのは、やはり川のシーンですか?

■入江悠監督:やっぱり川ですね。予告編でも使われている三兄弟が川の中で格闘するシーンでは、撮影中に一度も降らなかった雪がその日だけ降ったんです。スクリーンで見ると、雪の粒が効果的に写っています。本当にその日だけの雪だったので、奇跡的ですよね。スタッフもキャストも凍えそうで本当に大変だったんですけど、辛い撮影であればあるほど、いい効果が生まれますよね(笑)。


今回、監督の出身地である埼玉県の深谷市での撮影というのは、監督にとってはどういう意味を持つのでしょうか。他の地での撮影とは違いますか?

■入江悠監督:なんかやっぱり違うんですよね。未だに言語化できていないんですど、違いはありますね。愛着もありつつも、この風景は見飽きたというような…。愛憎半ばする感じもありますし、他の地での撮影とは違ってきますね。基本的に地元が嫌で出てきた人間なので、後ろめたい部分も感じたりはするんですが、今回は自警団の役で地元の人たちに集まってもらいました。こういう役は東京から連れて行った俳優では真実味が出ないんです。そこで生活している人の顔が必要なんですよね。昼間は地元で仕事をして、夜は撮影に参加してくれる人たちの中に鈴木さんや吉村界人くんが入って演じてくれたんですが、鈴木さんたちも「この人たちは本物だ」と緊張するんですよね。すごく相乗効果があったと思いますね。実は僕の中学校の同級生も参加してくれたりするんですよ。


『SR サイタマノラッパー』の頃はインディーズ監督のイメージが強かったですが、今では『ジョーカーゲーム』、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』と、さまざまなタイプのメジャー作品を監督していらっしゃいますね。

■入江悠監督:『SR サイタマノラッパー』というのは青春映画と言われていますが自分の中では違う位置付けで、個人の不安だったり、未来の見えなさだったりといった物を描きたいなと思っていたんで。よく「いろいろなジャンルを撮りますね」とは言われるんですけど、自分の中では一貫性があるんですよね。亀梨(和也)くんのようなかっこいい男子でも、『ジョーカーゲーム』のあのキャラクターに関しては『SR』のIKKU的な、なんというか…童貞感といいますか、そういった感じを描いていたりもするので。


『22年目の告白 -私が殺人犯です-』も『ジョーカーゲーム』もすごく面白く拝見したのですが、原作がある作品に関してはどういう姿勢で作品に向き合っているんでしょうか?

■入江悠監督:原作があるものというのは、自分の発想では出てこないものばかりなんですよね。ストーリーの面白さだとかキャラクター造形なども、自分の中にはないものなんで、やっていて楽しいんですよね。自分では絶対にこういう風には書けないなあと思うので。それで、原作の持つ魅力を最大限に膨らまして、物語を発展させていくようにしています。


ご自身の本来の持ち味が一番行かせるのは、どういう作品だと思われていますか?

■入江悠監督:いやそれはむしろ僕がお聞きしたいです(笑)。でもまあ、僕はもともとパニック映画とか、ディザスタームービーが好きなんで、いつかやってみたいとは思っていますね。地球が大パニックになったとき人はどう動くのかとか、モブシーンの怖さとかを突き詰めてみたいですね。


ここ10年のご自身の活躍や進化については、どう思われていますか?

■入江悠監督:10代の終わりで映画を志したんですが、20代は映画の世界で生きていけるかわからなくて不安でしょうがなかったんですよね。それで30代は依頼された作品にがむしゃらに向き合って、あっという間に過ぎたという感じなんですよ。こういう仕事なんで、仕事がいつなくなるかというのはわからないんですよね。それで自分の原点、オリジナルの脚本を書いていないと仕事がなくなったときに困るという危機感みたいな物が常にありました。それで今作は、自身のルーツの地を舞台にオリジナル作品に挑戦したという感じですね。

監督が映画を作る上でいつも一番大事にしていることはなんでしょうか?

■入江悠監督:最近は脚本も書くことが多いので、ひたすら足を使って調べることを大切にしています。今回もいろんな場所にいって、いろいろな人にお会いして調べましたね。松本清張とか脚本家の笠原和夫さんも言われてますけど「足で書く」というのは本当に名言です。足で歩いて調べたことっていうのは、作品のディテールに本当に反映するんですよね。もちろんフィクションとしての嘘もあるんですけど、事実を知った上でつく嘘は真実に近くなるんですよね。今回で言えば市議会議場を回ったり、「市議会だより」なんかを取り寄せて読んだりもしました。


監督自身のバックボーン、映画監督になろうと思ったきっかけなどを教えてください。

■入江悠監督:集団生活が苦手で、満員電車にのらなくていい仕事につきたいというのがあったんですよね。映画が好きで映画の仕事につきたいとは漠然と思っていました。でも、岡本喜八監督の「独立愚連隊」シリーズを見た時に「日本映画ってこんなことができるんだ」と思って、映画監督という職業に自覚的になったように思います。今も撮影中は1時間くらいしか寝られなかったりして辛いんですけど、自分のやりたいことはこれしかないので、1日にレッドブルを3本くらい飲んで、撮影に挑んでます(笑)。

近年、目覚ましい活躍を見せ、これからの日本映画界を牽引していくであろう入江監督。この活躍の源泉に“いつ仕事がなくなるかわからないという不安”があるという発言に意外性を感じてしまった。ユーモアを交えながらも、落ち着いた口調でご自身の思いを語る入江監督からは、その“不安”とは真逆の安定感や、貫禄をも感じられた。15年前から構想を抱いていた題材を、自身のルーツとなる土地で作り上げたというこの映画『ビジランテ』は、まさに現在の入江監督のすべてを結集して挑んだ現時点での最高傑作と言えるだろう。

【取材・文】松村 知恵美


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『ビジランテ』
2017年12月9日よりテアトル新宿ほか全国にて
配給:東京テアトル
公式HP:http://vigilante-movie.com/
©2017「ビジランテ」製作委員会

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