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2017年11月 6日 (月)

これは最終楽章のはじまりなのか 坂本龍一の音楽と思索の旅を捉えたドキュメンタリー 第74回ヴェネチア国際映画祭 公式出品『Ryuichi Sakamoto: CODA』初日舞台挨拶

日時:11月4日(土)
場所:角川シネマ有楽町 
登壇者:坂本龍一、スティーブン・ノムラ・シブル監督

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世界的音楽家・坂本龍一に2012年から5年という長期間にわたり密着し、本人が「全てをさらけ出した」 というドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』が、11月4日、全国公開となった。

震災以降の坂本の音楽表現の変化に興味をもち、取材を始めたのは、本作が劇場版映画初監督となるスティーブン・ノムラ・シブル。坂本龍一初の劇場版長編ドキュメンタリーである本作は、オリジナルアルバム「async」の制作過程に密着。NYの自宅スタジオなどで行われた楽曲制作の様子、雨の音や北極圏の氷の溶ける音の録音風景など、新たな音を作る姿を追っていく。また、YMO時代のライブ映像や、『戦場のメリークリスマス』 『ラストエンペラー』などの映画音楽制作中の貴重なエピソード、2014年の闘病生活までのすべてをカメラに収めている。さらに、90年代から社会問題・環境問題へ意識を向けるようになったことによる、坂本の音楽表現の変化もインタビューと共に綴られる。過去の旅路を振り返りながら、新たな楽曲が誕生するまでの、坂本龍一の音楽と思索の旅を捉えたドキュメンタリー。


11月4日、坂本とシブル監督が初日舞台挨拶を行い、この企画が実現するきっかけとなった意外や出会いや、作品を通じて目指したことなど、たっぷり語った。坂本にとっては『戦場のメリークリスマス』以来34年振りとなる初日舞台挨拶となった。

スティーブン・ノムラ・シブル監督は、「今日は世界で初めての一般公開となります。この場に立てることを光栄に思います。5年以上かけてようやくご覧いただけることは、言葉にならない想いですが本当に嬉しいです。これから観てくれる方達のものになっていくんだな・・・と感じています。」と挨拶。坂本龍一は、「シブル監督、スタッフの皆さん、本当におめでとうございます。僕はただ撮られているだけでしたが、皆さんの努力のたまものですし、ぼくももちろん嬉しく思っています。さっき監督と話していたんですが、僕にはこの映画を客観的に観ることができないから、これから皆さんにどう思われるのか楽しみです」と挨拶した。

ふたりの出会いについて、シブル監督は、自身が参加した2012年5月にニューヨークで行われた、小出裕章氏による福島の放射能汚染に関する講演会であったといい、「坂本さんがそこに最前列にいらして真剣に聞かれていたんです。ずっとファンだったけどその姿に強い衝撃をうけて、ドキュメンタリーとか映画にできればと思い、衝動的に連絡をさせていただきました。」と説明。坂本に提出した企画の切り口は、実際出来上がった映画とは全く違う、NO NUKES 2012(坂本のよびかけにより開催された、“脱原発”をテーマとした音楽フェス)をきっかけとした、コンサート映画の企画だったという。当時、社会的な活動に密着されることに前向きだったことから、その企画に応えることにした坂本は、「自分を撮ってほしいというよりは、2011年以降、激動の中にいる日本社会を自分を通じて描いてほしいという考えだったんです。」という理由であったと説明した。実際にカメラを回し始めたシブル監督は、次第に音楽的なエンディングとしての“CODA”を捉えたいと考えを変えていったといい、坂本も、「新たにどういう音楽が生まれるのかを追うのは僕もいいアイデアだと思いました。時事的な作品にしてしまうと、映画としては(長く観られることのない)短命に終わってしまうから」とその手腕を評価する。


映画では、坂本へのインタビューを通じて大島渚、ベルナルド・ベルトルッチ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥといった世界的に名だたる映画監督との共同作業についても描かれているが、坂本は、「『戦場のメリークリスマス』は、初めてのことばかりでした。まず役者をやって、それが終わったら音楽。大島さんはああしろとかこうしろとかいうことを全く言わず、僕は右も左も分からないことだらけだったけど、最後まで何も言われることなく、作った音楽はすべて使われていました。次の大きな仕事がベルトルッチの『ラストエンペラー』で、2週間で45曲を作ったけれど、ふたを開けてみると半分しか使われておらずがっかりしましたね・・・最初に甘やかされたけれど真っ逆さまに落とされて(笑)」と懐かしそうに振り返る。


制作を通じて印象に残ったことを聞かれたシブル監督は、「多すぎてとても語れるものではありませんが、幸せなことに、坂本さんと長年関わったことで、僕自身、耳の使い方が変わったような気がしました。すべての音が音楽的に思えるようになって、街を歩くことでさえ楽しめるようになった気がします」とすっかり影響を受けた様子。


本作の撮影中に坂本が中咽頭がんを発症した時のことや、映画の中にもふんだんに使用されている坂本所有のプライベート映像についてなど、映画にまつわる様々な裏話も飛び出し、ふたりからは撮影を通じて長年時間をともにしたゆえの信頼感がにじむ。

本作が、すでにヨーロッパ、アジア、オーストラリアなどでの公開が決まっていることが発表され、最後に、監督は、「ご病気で辛い時もカメラを回させてもらって、坂本さんには本当に感謝しています。この映画は、感じてもらえる映画にしたいと思って作りました。特に“音”をぜひ感じていただきたい。そんな映画はなかなかないと思いますので、ぜひ映画館で観ていただきたいと思います。」と挨拶。


坂本は、「この映画には、余計な説明もなくていいと思います。結論めいたこともなく説教臭くもないです。この映画が日本全国、世界に広がっていけばいいと思います。どうもありがとう」と締めくくった。

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『Ryuichi Sakamoto: CODA』

2017年11月4日より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて
配給:KADOKAWA
http://ryuichisakamoto-coda.com/
(C)2017 SKMTDOC, LLC

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