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2017年7月25日 (火)

ドメスティックな題材をインターナショナルな作品に昇華させる内田英治監督、映画『獣道』と、海外進出の意味を語る

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宗教オタクの母親にネグレクトされてカルト教団の中で育った少女・愛衣と、地方で居場所を求めながらヤンキーとして生きる不良・亮太の姿を描く映画『獣道』。伊藤沙莉、須賀健太という子役出身の若手俳優たちが、閉ざされた地方で葛藤しながらも流されるように生きる二人をギラギラと演じた、一風変わった青春映画だ。新興宗教、ヤンキー、特攻服、ヤクザなど、超ドメスティックな日本の地方の姿を、イギリス人プロデューサーのアダム・トレル氏とタッグを組んで描いてみせた内田英治監督にインタビューを実施。映画について、そして映画監督が海外進出することの意味についてなど、熱く語っていただいた。

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実話がベースということですが、この物語をどういうきっかけで映画化されることになったのでしょうか?

■内田英治監督:実話と言っても原作本などがあるわけではないんですけどね。ある女優さんの身の上話を聞いて、こんなハードコアな生き方をしている人が日本にいるのかと衝撃を受けまして(笑)。それで、彼女の経験談にインスパイアされて映画化したんです。映画の愛衣以上に壮絶な経験をしているんですよ。


かなり壮絶な人生ですよね。

■内田監督:本当の彼女の人生はもっと壮絶でしたよ。実はあれでもだいぶマイルドに、人が引かない程度にリライトしているんです。それと、宗教の話だけだと単一的になってしまうので、前からアイデアがあった地方の不良少年の話をミックスして、一本の映画にしたんです。


邦題は『獣道』ですが、英題は「Love and other Cults」なんですね。教祖様の言葉で「孤独になるな、孤高であれ」という言葉がありましたが、愛衣は壮絶ではあるけれど、孤独ではない人生を送っていますよね。彼女に孤独ではない人生を送らせた理由というのは何かあるんでしょうか。

■内田監督:僕自身が海外で育って10歳で日本に帰ってきたんです。それであまり日本になじめなくて、友だちもあまりおらず映画に逃避していたんですね。その頃の自分の気持ちを愛衣に転移させている部分はあるでしょうね。「さみしいんだけど、ここで頑張るぞ」みたいなね。


愛衣は環境次第で見た目からファッションまですっかり変わってしまう千変万化な役柄で、その変化にも驚きました。愛衣を演じた伊藤沙莉さんの魅力はどこにあるでしょうか?

■内田監督:容姿でいうとダミ声とかいろいろありますけどね(笑)。中身でいうと、やっぱり演技がとても個性的なところですかね。テレビドラマなんかに出てると、いい意味でかなり浮いていますからね。彼女が出ているとすぐにわかりますよね。でも普段しゃべっていると本当に普通の女の子で、別に面白くないんですよ。ある意味、芸人さんみたいですよね。カメラの前に出るとパッと衣をまとうというか。お笑い的なセンスもあるんだと思いますよ。


では、須賀健太くんはどんな俳優さんでしょうか?

■内田監督:須賀くんは普段から面白いんですよ。でも本当にすれていない、すごいいい子で。それは伊藤沙莉もそうなんですけどね。


でんでんさん、監督の作品の常連俳優ですが、『下衆の愛』と『獣道』でも同じキダという名前ですね。

■内田監督:特に深い意味はないんですけどね、同じキャラクターを使うのがけっこう好きなんですよ(笑)。名前がかぶることが多くて。脚本を書くときにでんでんさんの役を考えたらなんとなくキダという名前が浮かんで…。深い意味はないんです、すみません(笑)。


監督ご自身で一番お気に入りのシーンはどこでしょうか?

■内田監督:好きなシーンは吉村界人くんがエアガンで敵対する不良たちを撃っているところですね。妙にシュールで(笑)。
あと、映画後半で成長した愛衣がAV女優になって、サイン会でファンたちがずらっと並んでいるシーンですかね。これはやっぱりすごくジャパン・カルトだと思うんです。秋葉原とかでアイドルのサイン会に信者みたいなおじさんたちがずらっと並んでいるシーンって、やはり日本独特ですからね。この日本独特のオタク文化を描写できたのは良かったなと思っています。


今回、現地の不良少年の皆さんがエキストラで参加して警察監視のもとで撮影されたということですが、大変なことはありましたか?

■内田監督:びっくりしましたよ、撮影に行ったら警察がいて、ロケ車両のナンバーを撮影したりしているんです。しかも撮影中止しろとか言われてね。とはいえ、撮影を中止するわけにはいかないですからね、正規の手順を踏んで許可を取って撮影に臨んでいるしているわけですし。東京ではそんなこと言われたことがないんですけどね…。


具体的にはどこのシーンですか?

■内田監督:映画の冒頭のシーンですね。伊藤沙莉と須賀健太がいるところに、バイクに乗ったアントニーと吉村界人がやってくるシーンなんですけど。あのシーン、カメラの枠の外には実は警察がたくさんいたんですよ。


そんな裏話があったとは…。

■内田監督:だから、あのシーン、実はバイクを走らせてないんですよ。音がして振り向いたらバイクが来ていたという演出にしています。まあ、このシーンはバイクを運転している二人が本物の元暴走族で総長だったそうなんですよね。それで警察がピリピリしたみたいですね。


今回の『獣道』と前作の『下衆の愛』では、イギリス人プロデューサーのアダム・トレル氏がイギリスの制作会社であるTHIRD WINDOW FILMSで製作を行っていますが、日本国内の映画作りと何か違いなどはありますでしょうか?

■内田監督:これはもう、すべてがまったく違いますね。まず企画の成り立ちの部分においても、ヨーロッパだと「なぜそれを作りたいの?」と根本的なことを聞かれるんです。作品に対する根本的なことを知りたがるんですね。でも日本だと「誰が出るの?」と聞かれるっていう。日本の映画作りは、結局“芸能界”のやりかたに沿っていかないといけないんですよね…。それに対してヨーロッパでは、当然、映画はビジネスではあるんですけど、ちゃんと“アート”として認識されているから、商業的な部分よりは内容重視なんです。文化事業であって娯楽産業ではないですからね。


ヨーロッパは内容重視、日本は商業重視の傾向が強いんですね。

■内田監督:あと、お金の配分もまったくちがうんですよ。不透明な部分もないし、監督に対して支払われる印税とかもまったくパーセンテージが違います。海外はクリエイターに対してクリエイティブにお金を払おうという文化が強いですからね。これは話し出すと3時間くらいかかっちゃいますよ(笑)。


ぜひ聞きたいです(笑)

■内田監督:海外の映画祭とかに出品して映画祭回りをしていると情報が入ってくるようになるじゃないですか。日本では監督に2次印税が1.75%しか支払われません。海外では細かく定められていて、もちろん比率も高い。そんな情報を聞くと、日本で監督をしている身としては心が痛くなりますよね。

そんなに違うものなんですね…。そうなってくると、若い映画監督志望の方は、日本より海外で映画製作を目指したくなりますよね。

■内田監督:うん、それは絶対にそうだと思いますよ。もう日本では「自分の映画をちゃんと作りたい」と思う若手監督たちの居場所がないんじゃないかと思うんですよね。まあ、大作の日本映画を作りたいという人は別かもしれないですけどね。若い人たちは外にどんどん出ていけばいいと思いますよ。


とはいえ、海外の製作会社と映画を作るというのもなかなか難しいと思うんですが…。監督はどのようなきっかけでTHIRD WINDOW FILMSと組むことになったのでしょうか?

■内田監督:やっぱり映画祭ですね。ロンドンで行われているレインダンス映画祭で『グレイトフルデッド』という僕の映画が上演されたんです。アダムがそれを観て気に入ってくれて、そこから「なんかやろうか」と話が進んでいったんです。ヨーロッパは監督で映画を選ぶ傾向が強いですからね。


『下衆の愛』でもロッテルダム映画祭など多くの映画祭に出品されていますが、やっぱり国外のマーケットや映画祭が重要ということなんですね。

■内田監督:めちゃめちゃ重要視していますね。というより、もうそこしかないと思ってるんで。だから、海外の映画祭などに積極的に出て行って、そこで評価される方法論を学ぶのがとても大事だと思うんです。例えば『淵に立つ』の深田晃司監督はヨーロッパの映画文化を熟知しているんですよ。彼はカンヌ映画祭で「ある視点」部門の審査員賞を受賞したり、すごく評価されている。話を聞くだけですごく勉強になる監督です。


テクニックというわけではないんでしょうけど、ヨーロッパの映画人が好む映画の傾向というのがあるわけですね。

■内田監督:例えば、ヨーロッパはメロドラマとか絶対に受けないんです。でも、それを知らずにお涙ちょうだいの映画を作っても、ヨーロッパの映画祭ではまったく評価されなかったりしますからね。そういう方法論を知っているかいないかでまったく違います。まず作品を観てもらって、そのうえでその作品を気に入ってもらえないと次にはつながらないですからね。セールス会社に目をつけられるための方法論というものがあるんです。


自身の作家性を確立したうえで、ヨーロッパなど、ターゲットとする地で受けるものを知りながら映画を作っていくことが重要ということですね。その結果としてセールス会社のバイヤーに気に入られれば、海外配給や海外との共同製作のチャンスが広がると。

■内田監督:うん、セールス会社がすごく重要です。監督とかは映画祭回りをしているうちに自分たちで学んでいるんですけどね。僕はTHIRD WINDOW FILMSのアダムに気に入ってもらったわけですけど、この会社は言ってみればカルトカンパニーなんですよね。アジア映画を好きな人たちが集まって、アジア映画でビジネスをしている。そのおかげで、今度『下衆の愛』がイタリアでリメイクされることも決まったりして。だから、そういう人たちに出会って、作品を気に入ってもらうことがとても重要になるんです。


ただ、監督の作品を観ると、『下衆の愛』といい『獣道』といい、かなりドメスティックな内容ですよね。こういうドメスティックな内容も受け入れられるんでしょうか?

■内田監督:実は自分でもびっくりしてるんですよ。最初『下衆の愛』を作った時は海外の映画祭では受け入れられないかもと思っていたんでね。自国とは全く違う文化を描いた、その国独自のものが観たいのかもしれないですね。


今日は本当に興味深いお話、ありがとうございました。海外との印税の違いとか、初めて聞いたので驚きました。

■内田監督:こういった話は僕らも伝えられてこなかったですからね。「映画監督は儲からない」っていうけど、これはそんなことはないんです。国際基準を守るだけで、もっと収入が増える監督はたくさんいますし。海外に行けば億万長者の映画監督なんてゴロゴロいますからね。僕も若い頃は「映画監督とは儲からないもの、映画とは芸能事務所やプロデューサーの言うことを聞いて作るもの」って思っていましたけど、映画祭回りをしているうちに海外の基準を知って、日本とは違うやり方があると気付いたので。だから映画監督を目指す若い人は、どんどん海外を見た方がいいと思いますね。


積極的に海外の映画祭に参加し、イギリスの製作会社で映画製作を行うなど、インターナショナルに映画作りを行っている内田英治監督。「日本には若手監督の居場所がない」と海外に進出されている監督の姿勢に、日本映画界の新たな可能性を感じることができた。内田監督のような旗手が海外で活躍の幅を広げていくことで、芸能界のシステム、監督などのスタッフの処遇が変わっていき、日本映画界も変わっていくのかもしれない。インタビューの予定時間を大幅にオーバーしたにも関わらず、聞きたいことの尽きない、とても興味深いインタビューだった。


【取材・文】松村 知恵美


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『獣道』
2017年7月15日よりシネマート新宿ほか全国にて順次公開
配給:スタイルジャム
公式HP:http://www.kemono-michi.com/
©third window films

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