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2016年4月 6日 (水)

「この作品は不思議な縁で結ばれた作品」『更年奇的な彼女』クァク・ジェヨン監督インタビュー


中国出身の国際派女優ジョウ・シュンと、“4小天王”の一人である人気俳優トン・ダーウェイを主演に迎え、若年性更年期になってしまった女性と彼女を支える男性の恋を優しくコミカルに描いた中国映画『更年奇的な彼女』。日本でも大ヒットした2001年の韓国映画『猟奇的な彼女』、日本を舞台にした2008年の映画『僕の彼女はサイボーグ』を手がけたクァク・ジェヨン監督による“彼女”三部作完結編となる本作、いよいよ4月8日より公開となります。プロモーションのために来日されたクァク・ジェヨン監督に、インタビューを行い、この作品が中国で製作されるきっかけとなった不思議な縁や、キャラクターに隠された秘密などをうかがってきました。

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韓国出身のクァク・ジェヨン監督ですが、本作は中国での製作となります。なぜ中国映画に参加することになったのか、理由を教えてください。

これを語りだしたらとても長くなりますよ(笑)。
私はこれまで2本の映画を中国で撮影しようとしたことがあるのですが、一つの作品は撮影が中断になってしまい、もう一つの作品は企画段階で立ち消えになってしまいました。これが3作目の挑戦なのです。
中国は、韓国や日本とはまったく映画製作のシステムがまったく違うので、いろいろと勉強が必要でした。

この作品は不思議な縁で結ばれた作品なのです。以前に撮影中断になった『楊貴妃』という映画の投資会社、製作者、監督の私という、スタッフが再び集まって作った作品がこの『更年奇的な彼女』になります。1作目の『楊貴妃』という作品は失敗しましたが、結果的には不思議な巡り合わせでこの『更年奇的な彼女』を成功させることができました。本当に不思議な縁で結ばれていると思います。

こういうこともあるので、私は普段から“縁”や“偶然”というものをとても大切に考えています。
私がシナリオを書いたツイ・ハーク監督の映画にジョウ・シュンさんが主演していたり、私が初めて全作通して観た日本のドラマ「スタアの恋」に主演していた藤原紀香さんがジョウ・シュンさんの声の吹き替えを担当してくださったり、本当にさまざまな縁を感じています。

「運命は努力した人に偶然という架け橋を与えてくれる」という『猟奇的な彼女』の言葉を思い出しますね。

ありがとう、その言葉は、私自身もとても大切に思っている言葉です。

監督は50歳を過ぎていらっしゃいますが、肉食的になれない若い男性像をとてもうまく表現していらっしゃると思います。なぜそんなに瑞々しく恋愛を描けるのでしょうか?

歳を重ねてくると、感覚を維持し続けるのはなかなか大変です。以前に比べると感覚は鈍っているかもしれません。しかし、20代前半、後半の2人の娘がいるので、娘たちを通して若者の感覚を知ることができています。まず最初に私の映画を見てくれる観客は娘たちだという思いで映画を作っています。

監督の作品には濃いキャラが多いですが、キャラクターのモデルは誰かいるのですか? 娘さんがモデルになっていたりするのですか?

娘よりも妻の方がキャラクターに投影されていることが多いです。まあ、妻自身があそこまで奇怪な行動をとるわけではないのですが、妻のとったちょっとした行動から刺激を受けて、想像力を働かせて、キャラクターを作り上げています。

監督の映画には強い女性が多く登場しますが、彼女たちは強さの裏に弱さを持っているように思います。監督の女性観を教えてください。

私なりのはっきりした女性観というものがあるわけではないんです。ただ、強く見えるキャラクターの方が、内面に弱さがあって、弱さを隠すために強く見せているのではないかと思います。

私の描くヒロインというのは、一見強く見えるんですけれども、実は悲しみや心の痛みを持ち合わせています。逆に男性は、弱そうに見えているんだけれども、好きな女性のことをとても大切にして、彼女を見守り続けています。一見弱く見えている男性が、実はとても強いんですね。こういったキャラクターが登場することが私の作品の特徴の一つと言えると思います。

監督は中国で『更年奇的な彼女』、韓国で『猟奇的な彼女』、日本で『僕の彼女はサイボーグ』で三つの国の男性を描いていますが、それぞれの国の男性のタイプの違いというものはありますか?

とくに3か国で違いがあるというふうに考えたことはありません。ただ、俳優さんのタイプによる違いはあると思います。シナリオを書く時にはどの俳優さんが演じても一緒のキャラクターになるだろうと思うのですが、俳優さんの演技パターンによって違うキャラクターになってくるということがあるのです。

『猟奇的な彼女』でキョヌを演じたチャ・テヒョンさんはオーバーな演技を見せてくれました。逆にそれで、より弱々しいキャラクターに見えたのではないかと思います。日本で『僕の彼女はサイボーグ』に出演してくれた小出恵介さんは静かな性格で、内面を見せる演技をする俳優さんだと思います。感情に正直に演じてくれて、涙を見せてくれました。韓国では男性が涙を流すのは恥ずかしいと思われているので、泣きたくても我慢してしまうようなところがあります。そう考えると、日本人の方が自分の気持ちに率直なのかと思いました。

この作品『更年奇的な彼女』で中国の男性を描きましたが、中国の男性は韓国よりも率直に感情を出すのではないかと思いました。トン・ダーウェイさんが演じたユアンは弱く見えますが、実はマッチョ的な部分も持ち合わせているんです。でも、そういう部分は女性には見せずに、とにかく優しく接するんですね。

ユアンは本当に優しい、理想的と言ってもいいくらいの素敵な男性ですよね。あんな男性を基準にされたら、世の男性は困ってしまいます(笑)。

すべての男性がユアンのような男性だったら、この映画を見ても彼が魅力的に見えないですよね。彼は長い間一人の女性を気遣って、変わらない愛を捧げているという男性ですが、こういう男性はなかなか現実にはいないと思います。だからこそ、少しでも彼に近づくように努力をすれば、愛が叶うかもしれませんね。

撮影で一番苦労されたことはなんでしょう?

一番苦労したのは、町中が水浸しになり、車の中にも水が入ってくるという洪水のシーンですね。俳優さんたちは冷たい水の中でずっと演技しなければならなかったので、とても大変だったと思います。

ただ、もっとも苦労したのは俳優さんのスケジュールを合わせることでした。トン・ダーウェイさんが別の作品の撮影と重なっていたため、1日も休まずに39日間で全てを撮影しなければならなかったのです。少しでもスケジュールがずれてしまうと撮影できなくなってしまうので、全てを撮りきるために必死でした。

最後の撮影が教会の結婚式のシーンだったのですが、結婚式後に2人が歩くシーンで3億ウォンするマセラッティの高級車が通るというシーンがあったのです。撮影の最後で、とても急いでいたので「早く行って!」と私が車を叩いたのですが、その手の跡が車についたらしく、後から「監督、3億ウォンの車にこんな手形がついてます」と写真が送られてきましたよ(笑)。
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温和そうな笑顔が印象的なクァク・ジェヨン監督。話し出すと止まらないといった雰囲気で、撮影の裏話などをニコニコと語ってくださいました。インタビュー中、日光が当たって眩しそうにしていた通訳さんのために、自らシェードを動かして日陰を作ってあげるなど、まるで映画の中のユアンそのもののような優しさと気遣いを見せてくれました。こんな優しさを持った監督だからこそあんなに素敵な恋愛映画が作れるのだと、思わず納得してしまった、楽しいインタビューでした。

取材・文:松村知恵美
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『更年奇的な彼女』

2016年4月8日よりTOHOシネマズ 日本橋、TOHOシネマズ 新宿ほか全国にて順次公開
配給:アジアピクチャーズエンタテインメント、エレファントハウス
公式HP:http://kounenki-girl.jp/
(C)New Classic Media Corporation

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