『さんかく』吉田恵輔監督 インタビュー

ナルシストなダメ男・百瀬は、恋人の佳代と同棲中だが、2人の関係は倦怠気味。そんなある日、夏休みを利用して佳代の妹で中学生の桃がやってくる。共同生活がスタートすると、15歳とは思えない桃の奔放な振る舞いに、百瀬は翻弄され遂には心ひかれていく・・・。
ひと夏の奇妙な“さんかく”関係をユーモラスに、そして時にシリアスに描いたのは、『机のなかみ』(07)、『純喫茶磯辺』(08)に引き続き、劇場長編映画3作目となる吉田恵輔監督。
前2作同様、男の悲しき性と一方通行な人間関係の描写で、見るものを唸らせる吉田恵輔監督に、本作『さんかく』についてお話を伺いました。
自意識過剰のダメ男・百瀬、ややおせっかいな百瀬の恋人・佳代、彼を翻弄する佳代の妹・桃。この3人の物語を思いついたきっかけは?
■吉田恵輔監督(以下、吉田監督):特にひらめきがあったわけではありません。『机のなかみ』での少女の描き方にやり残した感があったので、『机のなかみ』(07)が終わった時点で、脚本を書き始めました。
やり残したこととは?
■吉田監督:『机のなかみ』は、家庭教師が教え子の女子高生に翻弄されますが、それは家庭教師の勝手な勘違いです。今回は一方的なアプローチではなく、少女の方にも非があるような関係性を描きたいと思いました。男も女の子も被害者であり、加害者である。そういう関係性のものをやらないと、本当に男と少女の関係を描いたとはいえないような気がしたんです。
今回もダメ男が主人公ですが、いったい監督の中にはいくつダメ男の引き出しがあるのでしょうか?
■吉田監督:自分の周りにまともな人がいなんですよね(笑)。
ではご自身の分身ですか?
■吉田監督:分身ですね。でも別にダメ男にこだわっているわけではないんですよ。葛藤や感情の変化が描けるから好きなだけです。最初から強いロッキーじゃ面白くないですし、まともな奴だったら逆に壊していくしかない。壊れている奴が何かを発見して、成長したり、変わって行ったりした方が楽しいと思います。
男だけでなく女性の心理描写にも長けていますね
■吉田監督:佳代も自分の分身なんですよ。物語としては百瀬と佳代の立場を逆にしても成立するんです。結局男女の恋愛感は違うといいながらも、本質は変わらないような気がします。だからどっちでもいいんです。そもそも僕は男心すら分かっていないですから、女心なんてもっと分かりません(笑)。
高岡蒼甫さんとのお仕事はいかがでしたか?
■吉田監督:今回のキャラクターをよく理解していましたね。こちらが思い描いた百瀬像に沿った形で演じてくれました。「あっ、百瀬が言いそう」、「百瀬がやりそう」って何度も思えるぐらい自然体でした。感の良い俳優さんだと思います。
田畑智子さんとのお仕事はいかがでしたか?
■吉田監督:田畑さんは感情の作り方が凄いです。「はい、泣いて」と言われて、すぐに泣けるわけがないじゃないですか。でも今回は撮影時間に余裕があまりなくて、結構そういうケースが多かったんです。それにもかかわらず、ちゃんと感情を作って来てくれて、本番どころかリハーサルの段階から泣いていました。いつでもギアが入るんです。やっぱり女優だなぁーと思いました。
桃役にAKB48の小野恵令奈を起用した理由は?
■吉田監督:これはもうイメージに合っていたからです。脚本を書いている時点では誰も思いつかなかったのですが、たまたま『伝染歌』を見たときに端っこに彼女が映っていて、「誰この子?」って。気になって調べていくうちにやっぱりイメージ通りだと思い、あとは小野ちゃんありきでしたね。小野ちゃんのしゃべり方や言動に脚本を近づけていきました。あて書きです。
以前、「おじさんと女子高生の並びは基本だけど、そろそろ止めておかないと危険な人と思われる」と仰っていたのですが、言葉とは裏腹に今回は中学生で、年齢が更に低くなっていますが・・・
■吉田監督:違うんです!本当は別の企画があったんですけど、流れてしまったんです。塚本晋也監督のように『鉄男』、『鉄男II』があって、しばらく経ってから『鉄男 THE BULLET MAN』に戻るみたいな感じにしようと思っていたんですけど・・・。
資料を読むと高岡さんは監督のことを「変態」と評しています。以前、『純喫茶磯辺』の時も、仲里依沙さんが「変態」と言っていました。何故、ここまで「変態」呼ばわりされるのでしょうか?
■吉田監督:『純喫茶磯辺』では、麻生久美子さんからも「変態」と言われましたよ(笑)なんで変態なんですかねぇ・・・。でも逆に「一番まとも」と言われたこともあるんですよ。みんなが見て良いなと思うポピュラーなものが、まっとうなわけですよね?結構、自分的には「普通にみんなコレ好きでしょう?」という気持ちでやっています。女性の足を撮るのは、「みんな綺麗な足好きでしょう?」って思うからです。というのもあって、自分に対する「変態」は、アブノーマルではなく、どちらかというと褒め言葉として受け取っています。
長回しがトレードマークのようになってきましたが、好きな撮影手法なのでしょうか?
■吉田監督:あまり考えたことはないですね。今回、カットを割るつもりだったんですが、出演者たちの芝居を見たら割る必要がないなって。無理につなげたら役者さんのテンションが伝わらなくなってしまう可能性もありますからね。別に長回しが好きなわけではなく、結果的に長回しになっているんです。
映画作りでもっとも気をつけている点は?
■吉田監督:あまり意識はしていませんが、基本的には嘘に聞こえたり、見えたりするものはあまり良しとしないようにしてはいますね。リアリティがあるかないかが一番重要です。セリフをとちったとしても、リアルだったら問題ないです。
これからご覧になるかたに一言お願いいたします
■吉田監督:込めた思いはいっぱいあるのですが、それは実際に見て頂かないと説明できません。ですから、とにかく見て頂きたいです。見て損はしないと思います。
取材・文=伊藤P
<吉田恵輔監督 プロフィール>
1975年埼玉県出身。『BULLET BALLET/バレット・バレエ』(96)など塚本晋也監督作品にスタッフとして参加。一方、学生時代より、監督として自主映画を撮り続け、蒼井そら主演の中篇『なま夏』(05)が、2006年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ファンタスティック・オフシアター部門でグランプリを受賞。06年には、初の劇場用映画『机のなかみ』を完成させ、公開前から業界関係者より絶大な支持を得る。続いて、宮迫博之、麻生久美子、仲里依沙共演の『純喫茶磯辺』(08)を監督し、高い評価を得る。オリジナル脚本にこだわり、緻密な構成力、キャラクターの心の機微を描く演出力のセンスに定評がある。
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『さんかく』
2010年6月26日 より ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトルダイヤほか全国にて順次公開
配給:日活
公式HP:http://www.sankaku-movie.com/
©2010「さんかく」製作委員会









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