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2009年5月29日 (金)

『エンプティー・ブルー』帆根川 廣 監督インタビュー

『エンプティー・ブルー』帆根川 廣 監督インタビュー

人生に目的や意味を見いだせなくなった青年が、夢の中に現われるミステリアスな少女との交流を通じて、生きる希望を取り戻す姿を描く感動ストーリー。長編初監督となった帆根川廣監督をはじめ、たった3人の主要スタッフが5年の歳月と情熱を注いで制作した、異色の作品だ。美しく幻想的に描かれた夢の中の世界もさることながら、ひとりの孤独な青年の視点に立った繊細な心の描写が興味深い。寡黙な主人公を演じるのは、長編初主演の秦秀明。不安定な現代を生きる若者たちにこそ、観てもらいたい、そんなヒューマン・ドラマだ。

今回は本作の監督である帆根川 廣氏にお話しを伺いました。

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ハンブルグ日本映画祭への招待おめでとうございます!今の率直なご感想をお聞かせ下さい

■帆根川監督:「お声をかけていただいた時は驚きましたが、素直に嬉しいです」


本作は“主要スタッフ3名で少人数低予算で製作され劇場公開までされる”というとても珍しい作品だと思いますが、今後も本作のような作品は増えてくると思われますか?

■帆根川監督:「私自身映画業界の事や映画自体について全くの初心者のまま製作し完成しましたので、このスタイルしか知らないですよね。楽しく軽い気持ちでスタートしましたので。
製作が進むにつれ劇場公開が最終目標となりましたが、「映画業界全体の流れに対して自分のポジションはどうか?」というのは、あまり意識してないんです。他の方の製作スタイルには当てはまらないでしょうし、本当に私的で手作り感のある作品だと思っています。
なので今後も増えて行くかどうかというのは、正直わかりません」


劇場公開の流れで一番苦労されたのは?

■帆根川監督:「撮影が始まってから今現在まで5年も経っているので、初期の苦労は忘れてしまいました(笑)。
記憶が新しいのだと、劇場公開が決まってから思った以上に劇場作品としての形を整える作業が大変でした。お客さんにお金を払って観ていただけるようなレベルに作品を持っていかなければいけないし、チラシやWEBのデザイン制作まで自分で担当しましたので。
正直もうちょっと楽な物だと思っていたんですよ(笑)。でもちゃんとした劇場で上映されるからには最低限の事はしなきゃいけないですよね。もうすぐで初日を迎えるのですが、それまではこの状態が続くと思います。インタビューも中々慣れないですね(笑)」


独学で映画製作を学んだとプレスにあったのですが、どのような勉強をされたのでしょうか?

■帆根川監督:「学んだというか“作り始めてしまった”って言葉が適切かもしれません(笑)。撮り始めは全く知識が無いので、劇場公開作品とは明らかに違うんですよね。ただ課題は沢山ありましたが「自分のビデオカメラでも劇場上映されるような作品が出来るかもしれない!」とは思ったんですよ。
それで初めて映像についての本を買い、その課題をクリアするにはどうすればいいか考えました。基本的に3人で全てのスタッフワークをしましたので、全てが試行錯誤でした。それを短くすると「独学」って言葉になるのかもしれません」


完成に5年もかかったわけですが、途中でやめず最後まで続けられた理由は何だと思いますか?

■帆根川監督:「最初は面白そうかなって所から始まって、実際に面白くて、そしてこれをまともな作品に作り上げたいと思いました。短い映像が出来るたびに達成感があって「次の映像はもっといい物を作りたい!」と思えるんですよ。
そしてその映像を見て協力してくださった方もいて。自分の中での目標と達成感、そして映像を見て集まってくれた方々のためにも完成させたいと思いました。
それに潜在的に何かひとつの事に没頭したい時期だったのかもしれません。そして「本作のような小さな作品がどこまで人に届くのだろうか?」とチャレンジにも楽しみを感じていましたので、途中で諦めなかったのでしょうね」


映像を作成するうえでこだわった点は?

■帆根川監督:「今回は“挑戦”が制作にあたっての一つのテーマだったので、素人がすぐに出来そうなカメラワークはやめようと思いました。出来ないことが出来るようになるのが楽しいので。カメラはなるべく固定させ、手持ちでもドキュメンタリータッチのようなブレた映像にはしないようにしました。安定感のあるローアングルを多用しましたね。
技術的な粗が見えないように、お客さんがきちんとストーリーに集中できるように、だらしない映像にはしたくなかったんです。
またタカシの心情を表すのに、映像全体に青みをかけています。ストーリーが進むにつれ、その青みも濃くしています。主人公をずっと追っていく作品なので、お客さんに主人公と同調していただきたいと思い色彩にもこだわりました」


キャストの方には演技面でどのような演出をされましたか?

■帆根川監督:「タカシを演じた主演の秦秀明さんは、僕が描くタカシの方向性と大きく違う所はなくタカシを理解していただいたので殆ど演出はしていません。本編の中には素人の方が出演されているので、その方々には時間をかけて演出させていただきました」


タカシは中々取っ付き難そうなキャラクターですが、どなたかイメージや参考にされた方はいらっしゃったのでしょうか?

■帆根川監督:「それはないですね。本当にいたらマズイと思います(笑)。実は撮影現場となった群馬の風景から受けたイメージがキャラクター作りの根本となっています。タカシは冒頭に登場する霧の掛かった階段からイメージして作り上げました。なので人物より風景が先にありました。リアリティでいうとタカシのような人物はいないかもしれませんが、どこか共感できる部分があると思うんですよね。20代男性にそう言ってくれる方が多く私自身驚きました」


今回初監督を経験されて、自分自身の中で新たに得たものは何でしょうか?

■帆根川監督:「今まで仕事では一人で完結するものが多かったんですね。ただ映画は本当に沢山の方に協力していただかないと、全く何も出来ないんですよ。
部分部分で協力してくださった方も多く、自分が表現したい物だった本作が、他の人にとっても自分の作品・自分の関った作品となってくれたと思うんですね。
そういう意味で沢山の方と作品を作る面白さ大変さを今回新たに得ることが出来ました」

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帆根川 廣
090529__2_21973年群馬県生まれ。CGデザイナー。大学卒業後まもなく独立し、3DCGを中心に制作活動を続ける。2003年夏、日常の記録のために家庭用ビデオカメラを購入した事をきっかけに、映像の魅力に取りつかれ、当初から劇場公開を目指して独学で映画制作を学び、制作に取り組 みはじめる。当時撮りはじめた最初の作品が本作『エンプティー・ブルー』で、3本の短いプロトタイプの制作を経て本作を完成させた。その後、東京・群馬にて数回の自主上映を行い合計300名弱を集めて好評を得、今回の劇場公開へと繋がる。教育関連の問題に取り組むNPO団体と古くから関わりがあり、ひきこもり・不登校・ニートなどの若者と親交が深く、本作の内容にも深い影響を与えている。脚本・撮影・編集を自身で手掛け、少人数のスタッフによって高いクオリティーを追及する。また高価な機材を自分で工作するなどその制作スタイルは異色で、自身では「D.I.Y.映画制作」と呼んでいる。CGデザイナーという職業ではあるが、本作ではあからさまにCGとわかる場面を一切排除してオーソドックスなアナログ風の表現に徹した。


『エンプティー・ブルー』
配給:アステア
公開:2009年5月30日
劇場:渋谷シアターTSUTAYA(レイト)ほか全国にて順次公開
公式HP:http://empty-blue.com/

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