『ラブファイト』北乃きい インタビュー
“この作品でプライドと女を捨てる術を学びました!”
出席者:北乃きい

いじめられっ子の稔と、ケンカがめっぽう強い美少女・亜紀。幼馴染みの2人の不器用なラブストーリーを軸に、ボクシングに賭ける情熱と、拳をぶつけあって語り合い成長していく姿を描いた『ラブファイト』。
パワフルな女の子を演じたのは映画やドラマに引っ張りだこの北乃きい。肉体的にも精神的にも過酷な撮影を経て、将来の糧となる経験値を得たようだ。
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本作の出演オファーが来た時の感想は?
■北乃きい(以下、北乃)「以前からアクションをやりたいと思っていましたし、ボクシングをはじめ格闘技が好きだったので、すごく嬉しかったです」
ボクシング・シーンを演じる際に、気を付けた点は?
■北乃「例えば、ある俳優さんがスポーツ競技を演技として演じる際、ちゃんと出来ていないのに上手い設定だったりすると、リアリティがなくなってしまいます。それだけは絶対に嫌だったんです。目標は、プロのボクサーにはなれないけど、5ヶ月の練習期間で自分を全て出し切って、プロの人やボクシングが好きな人が見ても“凄い”って、思ってくれるようになることでした。それが出来れば、本物の映画になると思いました」
実際にボクシングを経験してみていかがでしたか?
■北乃「女子のボクシングは1ラウンド2分で1分インターバルですが、私は1ラウンド3分、1分インターバルという男子のメニューでトレーニングをしました。だから本当にきつかったのですが、ボクシングをやったんだという充実感はあります。綺麗なボクシングよりも、見ていて痛いリアルなボクシングをみせたかったですし、成島出監督も嘘は付きたくないとおっしゃっていたので、ボクシングだけじゃなく、アクションも含め、吹替えやCGは一切なしです」

北乃さんはK-1のブアカーオ・ポープラムック選手の大ファンとして知られていますが、格闘技の見方も変わりましたか?
■北乃「前はテレビで観戦しながら、“そこでクリンチして、右フックだよ”とか、“ガードが下がってるよ”とか言っていたのですが、今は言うのを止めましたね(笑)やってみてわかりました、そりゃ、ガードも下がりますよ。疲れますもん」
演じた亜紀はどんな女性だと思いましたか?
■北乃「色で例えると赤に近いオレンジと、オレンジに近いピンクという混ざらない二色です。外見は強そうでライオンみたいですが、内面はとても繊細。だから亜紀はガラスのライオンなんです。弱くて傷つきやすいからこそ、頑張って強がっているんだと思います」
ご自身と似ているところは?
■北乃「サバサバしていて、男っぽいところは自分に似ていると思います。私も男より強くいたいと思っています。自分と似ている分、真っ直ぐな気持ちで演じられたので、嬉しかったです」
亜紀は外見と中身とにギャップがあるとのことですが、北乃さんご自身は?
■北乃「ギャップはありますね。大人しそうに見られる顔立ちですし、眼鏡を掛けたら頭が良さそうだと言われたこともあります。元々活発で元気な性格なので、表面的に真面目だと思われるのが凄く嫌だったんです。だから今ある北乃きい像を『ラブファイト』でかき消したいと思いました」
演じる際、一番難しかったシーンは?
■北乃「ぶりっ子するシーンですね。自分では凄くぶりっ子しているつもりだったんですけど、見てみたら全然ダメでした。もっと極端にやれば良かったと思いました。自分の素に近い役柄な分、難しかったです」
一番勇気が必要だったシーンは?
■北乃「たくさんあるのですが、一番はボーリング場で○○するシーンですね。あのシーンの撮影のお陰で、プライドや女であることを一瞬捨てる術を身につけました。だから今だったら何でも出来ますよ!」
林遣都さんが演じた稔は最初ヘタレですが、稔みたいな男の子をどう思いますか?
■北乃「ヘタレはあんまり好きじゃないです(笑)。無駄に喧嘩が強くなくていいので、大切な人を守れる強さがあれば良いです」
林遣都くんとの共演はいかがでしたか?
■北乃「幼馴染みの役だから喋らなくっちゃって思ったんですけど、お互い人見知りなので、あまり喋れませんでした。最近、二人で取材を受けることが多くて、ようやく少し喋れるようになったのですが、そんな風に思っていたんだということがたくさんあって、いつも新鮮な気持ちで会話させていただいています(笑)」
役者としての林遣都くんは?
■北乃「集中力があって、努力すれば何でも出来るタイプです。私は努力が苦手ですし、勘で動くタイプです。勘で動くタイプは、出きるものは簡単にパッと出来るのですが、出来ないものはどんなに努力しても出来ないんです。だからちょっと悔しかったですね。林さんの集中力はずば抜けて凄いです。賜物だと思います」
同い年ですが、ライバル心はありましたか?
■北乃「ライバル心はありましたね。ボクシングで比べられましたし。 “疲れているでしょ?女の子なんだから、明日もあるし休みなよ”と女扱いされたかと思ったら、“遣都くんはもうあれも出来て、これも出来るようになったけど、きいちゃんはまだ出来ない”って、男として比較されるんです。それがかなりきつくて、“男扱いしてください!”って言ったら、今度は男扱いされ過ぎて、“もう嫌だ!”ってなりました(笑)」
きつかった時はどうケアしたのですか?
■北乃「“男と女は違うのに、なんでボクシングで比較されるんだ!”って、嫌気が差していたのもありましたし、出来ない自分が悔しくもありました。あまりにも悔しくてホテルで泣いたんです。更に泣いている自分がまた悔しくて、布団に右ストレート打ちまくりました(笑)そんな時期に家に帰ったら、祖母が私の長いバンテージを洗濯して、アイロンを掛けて、巻いておいてくれたんです。それがとても救いになりました。祖母がいたからやり遂げることができました」
そのきつかった時期を、今振り返ってみると?
■北乃「 今振り返ってみると、どうでもいいやって思えるようなちっぽけな行き詰まりではなかったんだって、思いますね。厚くって高い壁を乗り越えた今、新しい世界が見えています。だから結果的にきつい時期があって、良かったんだと思います」
成長著しいですが、将来どんな女優さんになりたいですか?
■北乃「周りから何と言われようとも軸を崩さずに、自分が思い描いていることを表現できるようになりたいです。あと前の役を引きずらず、次の作品に入る時には透明になって、いつも新しい気持ちで役に挑めるような女優さんになりたいです」

大先輩である大沢たかおさんとの共演はいかがでしたか?
■北乃「映画とドラマの違いの話をしてくれました。“ドラマは常に全部感情を出さないとダメなんだよね。小出しにしていると、チャンネル変えられちゃうから。でも映画は映画館で見るから、小出しにしても大丈夫だし、その方が面白い”っておっしゃっていました。実は成島出監督から最初に“芝居がドラマっぽい”と言われていたんです。ドラマと映画の演技の違いなんてさっぱりわからなかったんですけど、大沢さんの言葉で、“その時の瞬間だけの気持ちで演技をするな”ってことなのかな?って、思いました。でも大沢さん、“俺もドラマと映画の切り替えが、まだよくわかってないんだよねぇ”って、おっしゃっていましたけど(笑)」
今回、大沢さんはプロデューサーでもありますが、映画人としての大沢さんから得るものはありましたか?
■北乃「オフなのに現場に来て下さったりして、自分のことだけじゃなくて、キャスト、スタッフのことを常に考えてくれていました。出演者であり、プロデューサーでもある大沢さんが一番大変なのに、他の人のことばかり気に掛けていて、逆に大沢さんが大丈夫なのかと心配になりました。“大丈夫ですか?”って声を掛けても、いつも笑顔で“大丈夫、大丈夫”って。“これは二人(林遣都&北乃きい)の映画だから”といって、大沢さんは先日の東京国際映画祭のグリーンカーペットも辞退しているんです。そんな大沢さんの期待に応えないといけないですね」
では、かなり刺激を受けたようですね?
■北乃「大沢さんの『ラブファイト』に対する思いは本当に熱くって、宣伝活動も今までにないぐらい積極的です。そんな大沢さんの姿を見て、クランクアップしたから終わりなのではなく、公開されて、みんなに見てもらって、感想が出てきて、やっと終わりなんだって思うようになりました。映画は最初から公開されてお客さんに見てもらうまで一本の線で繋がっていて、その線を切っちゃいけないんだなって。あまり自分の出演作を映画館に見に行かないのですが、今回は行って、お客さんの反応を肌で感じてこようと思っています。映画館で映画の感想がもっとも語られる場所はトイレなので、上映が終わったら即行でトイレに行って待機します!」
<北乃きい プロフィール>
1991年神奈川県出身。05年、史上最年少で講談社“ミスマガジン2005”グランプリを受賞。同年テレビドラマ「恋する日曜日 夏の記憶」で女優デビューを果たした後、テレビ、CMで活躍。07年『幸福な食卓』で映画初出演にして初主演。第31回日本アカデミー賞新人賞、第29回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。同年の主演ドラマ「ライフ」(CX)でいじめられっ子を熱演し注目を集める。08年には月9ドラマ「太陽と海の教室」にも出演。その他の映画出演は、『スピードマスター』(07)、『ポストマン』(08)、『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』(08)があり、09年には北川悦吏子が脚本・初映画監督を務めた『ハルフウェイ』の公開が控えている。
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『ラブファイト』
公開日:2008年11月15日
劇場:新宿バルト9ほか全国にて
配給会社:東映
オフィシャルHP:http://lovefight.jp/
(c) 2008「ラブファイト」フィルムパートナーズ
取材・文:伊藤P









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