『俺たちに明日はないッス』タナダユキ監督 インタビュー
出席者:タナダユキ監督

思春期の悩み多き高校生たちを描く。『神童』『コドモのコドモ』と映画化が続く“さそうあきら”の原作コミックを元に、『リアリズムの宿』『リンダリンダリンダ』など、山下敦弘監督とのコンビで名を馳せた向井康介が脚本を執筆。セックスに関するあれこれを、ときにスラップスティックに、ときに情感たっぷりに描き出した原作の世界観を損なわない作品に仕上がっている。キャストにはこれからの日本映画を担うであろう若手俳優が集結。特に比留間役の柄本時生(父は柄本明、兄は柄本佑)は『奈緒子』『きみの友だち』『フレフレ少女』と公開作が続く注目株だ。
今回は本作の映画化をご自身も熱望された、タナダユキ監督にお話を伺った。
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映画化の経緯は?
■タナダユキ監督(以下、タナダ):「原作の「俺たちに明日はないッス」を愛蔵版が出たくらいに読んで、すごく面白くて惹かれました。映画化したいと思ったのは、4~5年前くらいからです。そこから映画化に向けて動きました。皆さん原作は面白いと言ってくださるのですが、描写的な問題があって中々映画化までには時間がかかりましたね。「面白いね!」だけで、うやむやにされていて(笑)。
ただ今回出資してくださる奇特な方が現れ(笑)、映画化することが出来ました」
短編連作の原作ですが、そこから「ロマンス」「揺れています」「教えてください」の3編を選んだ理由は?
■タナダ:「高校生の話を描きたいなと思っていて。他にも高校生の短編はあるのですが、現実的に考えてこの3編にしました。あとは群像劇をやりたかったので、この3編を男女6人の青春群像としてまとめました」
今回脚本をタナダ監督ではなく、向井康介氏が担当されていますよね
■タナダ:「私が余りにも原作が好きすぎて、全然手を加えられないんですよ(笑)。これじゃ不味い!と思い脚本を依頼しました。しかも男の子が主演の作品なので自分が書くよりも、客観的な意見も入れたほうが良いと思ったからです。それに今まで長編映画では他人の書いた脚本で撮ったことがないので、それは自分にとってある意味挑戦でもありました。
完成した脚本を読んで改めて思ったことがあって、脚本家が闘える場所は脚本しか無いわけで、それをどれだけ租借出来ているんだろう?と考えましたね。私の場合は、「原作が好き!」の初期衝動のような感じがあって(笑)。責任重大でした」
原作の魅力とは?
■タナダ:「選んだ3編だと男の子達が情けなく、知性もないのですが、非常に正直で男らしくカッコいいと思いました(笑)。たとえば、峯とちづの話に関して言えば、10代後半の恋愛って別れる事が多いのに、見捨てることをせずに最後まで一緒にいる選択をしている所とか。主人公の比留間に関しては、失恋して初めて“どうしようも無いこと”があることを知る所だったり、そういう10代の葛藤みたいなものを繊細に描いている所に魅力を感じましたね」
本作は全編を通して手持ちカメラでの映像が多いですが、その理由は?
■タナダ:「クランクイン前にカメラマンの山崎裕さんと話したのですが、私も山崎さんも“17歳の高校生の息遣いを撮りたい”という気持ちがありました。生々しい絵を撮るために手持ちカメラを使用したのですが、そんなに手持ちカメラでの撮影経験はなくて。本当に山崎さんには助けられた部分が多いです。それになんと言ってもメイン6人が若いのでキチキチ動きを決めるというよりは、大雑把に動きをつけて、自然な感じで演じてもらいました。いい表情いい動きをカバーするには、やはり手持ちカメラでの撮影が有利でしたね」
セックス描写がすごく生々しく感じました。役者さんにはどのような演技指導をされたのでしょうか
■タナダ:「生々しい映像を撮るからといって、生々しい演出をしたわけじゃないんですよね(笑)。実務的に「こうして、ああして」という感じに指示をしました。そうじゃないと変に照れが入り、演じる本人達も集中しにくいと思うので。かと言って全部任せるのは可哀相なので、多少演技指導はしました。結局現場が切羽詰っていたので、照れてる余裕もなかったと思います(笑)。繊細なシーンでもあるので、緊張はしていましたけどね」
今回主題歌に銀杏BOYZのカバー曲「17才」を使用されていますが、本作の雰囲気にこれほど合う曲もないですよね
■タナダ:「そうですね。「17才」という曲を選んだのは脚本の向井さんのアイディアで、私の世代では森高千里さんがカバーしたのを聴いていました。劇中で言うと田口トモロヲさんが演じた吉田先生は、南沙織の「17才」を知っているはずなんですよ。逆に比留間の様な現代の高校生は「17才」を知らない。友野は吉田先生にこの曲を教えてもらって曲を知っている。比留間、友野、吉田先生の三角関係を表すのにはピッタリな曲だと思います。比留間にとっては、切ない曲でもあるんですけどね。
そしてエンディングはラストシーンから繋がるわけで、銀杏BOYZだったら比留間のモヤモヤした気持ちとか、切なくてヤケになる気持ちを、比留間の真正直な感情で過不足無く歌に込めてくれると思ったので、主題歌のお願いをしました。私自身、銀杏BOYZの大ファンということもあるのですが、彼らしか浮かんできませんでした」
本作で新たにチャレンジされたことはありましたか?
■タナダ:「ある意味チャレンジせざるを得なかった事なのですが、メイン6人の演技経験がバラバラだったので、一つの物にまとめるのが思っていた以上に難しかったですね。例えば何も言わなくても出来てしまう子と、手取り足取り演技指導をしても体がガチガチになる子もいて、でも皆を平均に持っていかなくてはいけなかったので、監督として修行させてもらっているような気がしました(笑)。ただ、相手役の演技に引っ張られ、触発されて演技を返すやりとりが見られたのは、新たな発見でもありました。群像劇を撮るということはチャレンジでしたね」
監督にとって“性”を撮るというのは、どのような位置づけですか?
■タナダ:「私にとっては特別な事ではなくて、映画が誰かの人生を垣間見るものであれば、性と言うのは絶対に通ることだと思うんです。セックスシーンをやる・やらないは別として、どちらを選択してもその行為について考えるわけで。私は“性”を撮りたいわけではなくて、その行為を越えた、その先にあるものを描きたいとは思っています」
原作ありきではなく、オリジナル作品へのこだわりはありますか?
■タナダ:「はい、オリジナルをやりたいですね。ただ私の場合、オリジナルの企画が通るほど甘くはないので(笑)。原作物でも、自分がちょっとでも共感できればそれを撮りたいです。とにかく映画の経験を積みたいですね。それがいつかオリジナル作品へ繋がってくれればいいなと思っています」
ヘアメイク:Takayuki Nakada
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『俺たちに明日はないッス』
配給:スローラーナー
公開:2008年11月22日
劇場:ユーロスペースほか全国にて順次公開
公式HP:http://oreasu.com/










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