『水の中のつぼみ』セリーヌ・シアマ監督&アデル・へネル インタビュー
“水は女性の欲望のシンボルであり、官能性と苦悩を表す道具”
出席者:セリーヌ・シアマ監督、アデル・へネル

3人の少女の成長と性の目覚めを描くフランス映画『水の中のつぼみ』が、3月、フランス映画際で上映され、来日したセリーヌ・シアマ監督と、主演女優のアデル・へネルさんがインタビューに答えてくれた。
本作は、シアマ監督が映画学校の卒業作品として執筆した脚本を自ら映画化したもの。これまで30ほどの映画祭で上映され、その終着点として日本へやってきた。「夢を託した作品なので、意味深いです」と、来日の喜びも大きいよう。
______________________________________________________________________
卒業作品で書き上げた脚本と、映画として出来上がったものでは違いがありますか?またアデルさんは、最初に脚本を読んだときの印象は?
■シアマ監督:「映画になるということで、最初の脚本から何段階か修正しています。撮影中にもいくつか修正を加えています。最終的に出来あがったものが、一番いいものになっていることを期待しています」
■アデル:「脚本を最初に読んだ時から、ぜひこの映画に出たいと思いました。読んですぐにフロリアーヌ役をやりたいと感じました」
アデルさんが演じるフロリアーヌは、自信に満ちていながら硬い殻を被った少女です。この役にそれほど惹かれた理由はどこにあるのでしょうか?
■アデル:「映画に出たいと思ったのは、人物にも興味を引かれたけれど同時にストーリーにも興味があったからです。フロリアーヌという人物はどこか二重人格で、自信を持ちながらも孤独な少女です。そのふたつを演じ分けるのは面白そうだと思いました。それから、舞台設定になっているシンクロナイズド・スイミングも、私にとって大きなチャレンジでしたが、とても興味深かったです」
性の目覚めというテーマで、主人公を3人にしたのはなぜですか?
■シアマ監督:「3人の少女を主人公にすることで、様々なテーマを絡み合わせて、より繊細で奥深いものを表現したかったからです。3人の相互関係から、より複雑で深い問題を描くことができると思いました。演出の上でポイントにしたのは、まず、それぞれの役柄を演じる少女たちが、役柄と同じ年齢であるということ。2つ目のポイントは、みんなプロではなく、演技を始めたばかりの少女であること。新聞の告知や道でのスカウトで決めました。3人とは、役柄の感情を表現するために1ヵ月くらいかけて、一緒に作り上げて行きました」
フロリアーヌ役を演じているアデルさんですが、マリー、アンヌという他の2人を加え、3人の少女のそれぞれどんな点に共感していますか?
■アデル:「この映画では、思春期の様々な問題を幅広く扱っています。体の問題や人間関係、自分の居場所について悩んだり。たぶん、誰もが3人の少女に自分を見出すことが出来ると思います。アンヌ役からは、体の成長に伴う感情や不安、悩みが表現され、それは誰もが共感できると思います。マリーは、私が実際に悩んできたようなことを表現しているので共感しています。フロリアーヌは最も完成された人物として描かれていますが、その中でも悩みを持っているんです」
アデルさんが見せる見事なスイミング・シーンは映画のみどころの1つでもあります。水を映画の中に取り入れることで、そのイメージを物語に絡ませているのでしょうか?
■シアマ監督:「ええ、水は非常に重要なテーマでした。水は女性の欲望のシンボルです。官能性と苦悩を表す道具なんです。シンクロは、人前で体を披露して何かを表現する競技です。水上では笑顔を絶やさず演技していますが、実は水面下では大きな苦労や苦悩があり、その両面が興味深かったんです」
セリフの少なさ、音楽の少なさなど、修飾の少ない作品ですが、これは意識したものですか?
■シアマ監督:「そうですね、どちらかというと、この映画はアクション・ムービーといえるでしょう。フランスでは伝統的にセリフの多い映画が多かったと思いますが、私はセリフで表現するのではなく、より内面性を集約して、アクション(行動)で見せていくものにしたかったんです。思考や装飾など、多くの道具がキーとなって、その側面を描いているんです」
フランスの原題「Naissance Des Pieuvres」は「タコの誕生」という意味だそうですが、そこには「女性の厄介な部分」と言う意味も含まれているそうですね。
■シアマ監督:「タコはジェラシーの象徴です。誰でも恋に落ちるとドロドロした感情やジェラシーを感じ、お腹にお化けのようなものが広がって手足を締め付ける。この映画ではそんな状況を表現していること。それから、タコは心臓が3つあるんですが、それを3人の少女に当てて表現するという意味です。もちろん男性だってそういった感情は持っていますが、特に女性と思ったのは、この映画をお腹で感じ、子宮で見て欲しいからです」
______________________________________________________________________
『水の中のつぼみ』
配給: ツイン
公開: 2008年6月28日 (土)
劇場: Q-AXシネマにて
公式HP: http://tsubomi-movie.jp/
■あらすじ
同級生アンヌのシンクロナイズド・スイミングの応援にやってきたマリーは、ジュニア・チームのキャプテン、フロリアーヌの姿を見て心を奪われる。マリーはフロリアーヌを待ち伏せ、練習を見学させてほしいと頼み込む。同じ頃アンヌは、男子部員のフランソワに着替え中の裸体を見られたことがきっかけで、彼に恋心を抱くのだが…。
■人物紹介

セリーヌ・シアマ監督
フランス文学の修士号を取得後、フェミス映画学校の脚本コースで学ぶ。卒業制作で執筆した「水の中のつぼみ」がコンクールで最優秀脚本賞を受賞し、本作で監督デビューを飾る。2007年のカンヌ国際映画祭では「ある視点」部門の正式上映作に選ばれた。

アデル・へネル
幼い頃からパリの劇団に参加し、11歳の頃『クロエの棲む夢』で主演を射止め映画デビュー。5年ぶりに出演した本作ではセザール賞最優秀有望若手女優賞にノミネートされた。高い演技の才能を持ち、映画の仕事を必要不可欠といいながらも、現在は学業に打ち込んでいる。









コメント