・ドイツ

2011年2月19日 (土)

ベルリン映画祭・コンペ部門(4)-Odem-

Odem

監督: Jonathan Sagall
脚本: Jonathan Sagall
出演: Clara Khoury, Nataly Attiya, Moran Rosenblatt, Ziv Weiner, Daniel Caltagirone ほか
オリジナル言語: 英語・アラビア語・ヘブライ語
2010年/イスラエル・イギリス/90分

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【作品のあらすじ】

ララは、パレスチナ人で、13年前にロンドンに移り住む。幼馴染のイナムの元彼と関係を持ち、子どもができて結婚。一見幸せそうな家庭を築いているものの、夫は長年浮気をしていて夫婦仲はもはや冷め切っていた。しかしララはそれでも良かった。見て見ないふりをすることで、この物質的に豊か生活が安定しているならそれで十分だった。
ある日、アパートの前にイナムが現れる。彼女の登場によって、大きな緊張が生じる。2人には過去に秘密があった・・・。


【所感】

脚本構成が素晴らしく、あっという間にストーリーの中に引き込まれていきました。幼なじみである2人の女性の記憶と現在の状況をこまめにリンクさせることで、彼女たちの間にあった悲しい過去がつまびらかになっていくストーリー展開は、観客を惹きつける見事な演出でした。

そして、過去に起きたある事件の記憶が、2人の間で大きな食い違いを見せているところが、この映画における最も特出すべき見どころだと感じます。それぞれの人生に影を落としている事件であり、後の人生が大きく隔たっているその起点に、様々な想いが宿りました。

暗さだけが漂う作品の中にも、どこか救いのあるラストは、必見です。

2011年2月18日 (金)

ベルリン映画祭・コンペ部門(3)-Coriolanus-

Coriolanus

監督: Ralph Fiennes
脚本: John Logan
出演: Ralph Fiennes, Gerard Butler, Vanessa Redgrave, Brian Cox, James Nesbittほか
オリジナル言語:英語
2010年/イギリス/122分/Presentation of European Shooting Stars

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【作品のあらすじ】

シェクスピアの『コリオレイナス』を現代に置き換えて映画化した作品です。
貧困で苦しむ民衆の間には、不満が増大し、爆発寸前の反抗的な空気が漂っていた。民衆の不満の矛先は、ケイアス・マーシアス将軍に向けられる。彼は傲慢で、庶民の声を聞くどころか、侮蔑する有様。怒りに狂った民衆は、暴動を起こしたのである。
彼らの指導者は、前に軍で指揮官を務めていたタラス・オーフィディアス。彼こそが、ケイアス・マーシアスの最大の敵であった。コリオライの町の近くで決戦が行なわれ、ケイアス・マーシアスの勇気ある闘いにより、ローマ軍は大勝。ケイアス・マーシアスには、コリオライを解放した英雄として、コリオレイナスという添え名が与えられる。この功績によって、彼は政界に入るのに十分なパワーを手に入れる。しかし、演説が不得意でな彼は、元来、人を罵倒することで勝ってきたようなところがあった。そこを、政敵に利用されて、そそのかされた彼は、公衆の面前で市民を侮蔑する発言をしてしまい、政治家への野心を潰えさせてしまう。市民からの攻撃が激しくなり、彼はローマにいられなくなった。ローマを去った彼は復讐を誓うが、彼がローマを屈服させるためには、宿敵であったタラス・オーフィディアスと手を組む必要があったのだ……。
 


【所感】

シェイクスピアの素養が無くても、十分見ごたえのある作品に仕上がっていましたが、事前にシェイクスピア作品であることや、作品内容等の情報収集をしておけば、もっとスムーズな理解が出来たと思います。現代版にしたことで、少々無理強いとも思えるシチュエーションもしばしば登場し、また何故ローマ????という疑問が終始付きまとっていました(笑)単に私の勉強不足が原因なのですが・・・。

主演を務めるイギリスの演技派俳優Ralph Fiennesが、初めてメガフォンを取った事でも注目されている作品です。劇中には、いくつかのシーンで頻繁に、古典的なニュースリールという技法が使われていました。いわゆるニュース映像がそれですが、このニュース映像を交えながらのストーリー展開は、複雑な政治的繋がりや相関図もストレートに観客に伝えることが出来るので、現代版における 『コリオレイナス』には、実に有益な演出になっていたと思います。

エンディングは、若干奇をてらい過ぎている気もするのですが、初監督作品にして、主演を務めたRalph Fiennesには、大きな拍手を送りたいと思います。今後の監督業、俳優業が楽しみです!


2011年2月17日 (木)

ベルリン映画祭・コンペ部門(2)-The Future-

The Future

監督: Miranda July
脚本: Miranda July
出演: Hamish Linklater, Miranda July, David Warshofsky ほか
オリジナル言語: 英語
2011年/ドイツ・アメリカ/91分

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【ストーリーのあらすじ】

主人公は30代の男女カップル、ソフィーとジェイソン。
付き合って4年になるというのに、どうもしっくりいっていない。倦怠期の原因は、お互いの仕事を嫌っていることもにもあった様だ。このマンネリ化した関係から脱出するためには、2人で何か協力して出来ることを探そうと考える。そして2人は、傷ついた猫を引き取って面倒をみることを決めるのだ。しかし猫を引き取るためには、これまでの生活を変える必要があった。しかしこれが2人の関係を更に悪化させることに・・・。


【所感】

劇中に終始流れるファンタジックな雰囲気はとにかく絶品です!
主人公ソフィーを演じるミランダ・ジュライが脚本・監督も務めていることから、彼女のカラーが全開・炸裂の、なんとも掴みどころのない、不思議で可愛らしい作品に仕上がっていました。
小さな女の子のナレーションで始まるオープニング。その声の持ち主が、実はネコであることが分かる導入部分から、ただごとではない作品の良い香りを感じます。さらに、ソフィとジェイソンのやり取りは、幾度と無く笑いを誘っていました。2人の間に流れている間合いやトーン、抜け感とでもいうのか、ゆる~い空気感がそのままこの作品の色になり、おとぎ話のような異次元の世界を作り出すのに手伝っていました。

脚本はオープンエンディングで、彼女たちが将来どうなっていくのか・・・という余韻を残しながら幕を閉じます。かつてフェミニズムの重要性を語っていたミランダ・ジュライらしい女性の描き方にも共感を覚えます。個人的には、とても好きな作品。

2011年2月16日 (水)

ベルリン映画祭・コンペ部門(1) -Yelling To The Sky-

ベルリン映画祭では、コンペ部門作品もいくつか観に行っていますので、所感をUPしていきますね☆

Yelling To The Sky

監督: Victoria Mahoney
脚本: Victoria Mahoney
出演: Zoë Kravitz, Gabourey Sidibe, Tim Blake Nelson ほか
オリジナル言語: 英語
2010年/アメリカ/96分

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タイトル通り、空に向かって叫びたくなるほど、日常生活に鬱積したものを抱え、重圧に耐えながら必死に生きている人々のドキュメンタリームービーを見ているかのような作品でした。

ストーリーの中心人物は、ある崩壊寸前の貧困層の黒人家族。2人姉妹の妹は、同級生に日常的ないじめを受けており、オープニングからストレスフルなシーンに直面します。姉も未婚のまま妊娠。父親の家庭内暴力に耐え切れず、ボーイフレンドと駆け落ちするも、またもやそのボーイフレンドから暴力を受け、実家に出戻りしてくる始末。


母は、父親の起伏の激しさと長年の暴力に精神的ダメージを受け、失踪。時間を置いたのち家に連れ戻されますが、死んだ魚のような目と脱け殻のように動かない彼女の姿には心が痛みます。

終いには、妹が人の道を踏み外し、高校生にして、ドラッグディーラーに堕ちて往く様は、少なからず同情すら覚えます。自分の身を守るには、手段を選べなかった彼女を取り巻く環境は、実にリアリティがありました。

しかし、一度は離散し、心がバラバラになりながらも、少しずつ少しずつ再生していく彼らの絆を見るにつけ、たとえ一度壊れたもの、壊したものでも、取り戻したい、守りたいという意思さえあれば、手遅れではないのかもしれないと感じさせてくれるドラマでした。

脚本構成、カメラワークが取り立てて素晴らしいわけではないけれど、間違いなく心に留まる作品であり、単なる家族再生のドラマには終わらない力を感じる作品でした。

2011年2月13日 (日)

ベルリン映画祭リポート-ヘヴンズ・ストーリー-

昨日は、フォーラム部門に正式出品されている『ヘヴンズ・ストーリー』の監督舞台挨拶と上映会に参加してきました☆

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『感染列島』や『サンクチュアリ』の鬼才、瀬々敬久監督が送る全9章、4時間38分にわたる超長編作品で、東京では既に劇場公開が終了し、現在は地方で公開しているようですね。

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2010年10月2日よりユーロスペース、10月9日より銀座シネパトスほか全国順次公開
2010,日本,ムヴィオラ
© 2010 ヘヴンズ プロジェクト


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オープニングに瀬々監督が登場し、『4時間半後にまたお会いしましょう』という言葉で会場に軽やかな笑いを起こして上映がスタートしました。


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本作は、瀬々監督が日本で実際に起こった事件からインスパイアされ、事件の加害者、被害者家族、またその事件をテレビで観た第三者たちを取り囲む人間関係と彼らの心情を丹念に映し出した渾身の秀作です。複雑に絡み合っていく構成の妙は、章を追うごとに重さと密度が増す気さえします。4時間半という大作でもなお収まりきれない私たち人間の永遠の命題 『生きること、死ぬこと、』そして『善、悪』の意味を考え、正答のないトンネルへと誘われていきました。

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2011年2月11日 (金)

ベルリン映画祭開幕!オープニング上映作『トゥルー・グリット』

昨日(10日)ベルリン映画祭が開幕し、私もオープニング上映作である『True Grit』を鑑賞してきました☆

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オープニングセレモニーやレッドカーペット後に、Friedrichstadtpalastという劇場で上映されるチケットを幸運にも入手することが出来たんです。

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なので、オープニングセレモニーの様子も生ではありませんが、映像で全て見ることが出来ました♪

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残念ながらセレモニーは7,8割がドイツ語進行なので(当たり前だけど・・・笑)、会場のあちこちで笑いが起こっているのに、一人だけ、 ポッカ~ン・・・・・な状況もしばしば。でも司会の女性が、ドイツ版・久本雅美さんのような、視聴者に親しまれるとてもユニークで明るい人柄の女優さん(どうやらコメディアンヌでもあるらしい)で、言葉が分からないのに、思わずファンになりました!

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さて、そんな余談はおいて置くとして。
早速、『トゥルー・グリット』について、少し書きますね。

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2010年8月26日 (木)

ベルリンの北野人気に圧倒☆ファンタジーフィルムフェスタにて

つい先日、ベルリンで開催中の 『ファンタジーフィルムフェスタ』 へ行ってきました♪ 

見た映画はカンヌ映画祭コンペティション部門に出品された北野武監督の 『アウトレイジ』です。


100513_outrage_main
2010,日本,ワーナー・ブラザース、オフィス北野
© 2010『アウトレイジ』製作委員会

映画の開始時間は19:00から。チケットは既にインターネットで購入済み。
座席はフリーシートだったのですが、ベルリン映画祭よりも規模も話題性も小さいので観客もあまり居ないんだろうと、高をくくっていましたが・・・。いやぁ~!!驚きの混雑振りでした。


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友人夫妻と会場入りしたのは、19時ちょうど。200人以上収容できる大会場にもかかわらず、最前列を除く全ての席が満席でした。 (まぁ、開始時間ちょうどに行く私たちも私たちですが・・・。) 一度は最前列に座ってみたものの、あまりの巨大スクリーンに目が痛すぎて、脇の通路階段部分に座ることに・・・(笑)


さて映画がスタート。私は内容もさることながら、ドイツ人の反応が気になって仕方ありませんでした。

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2010年8月18日 (水)

只今、ファンタジーフィルムフェスト開催中@ベルリン!

昨日から、ベルリンでは『FANTASY FILMFEST』が開催しています!

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ファンタジーフェストというから、例えば『ハリーポッター』とか、『ロード・オブ・ザ・リング』、『ライラの冒険』や、壮大なスケールが魅力の『スターウォーズ』など、SF系を思い描いてしまいましたが・・・、どうやらこのフェストの内容は毛色が違うみたいです。ファンタジー作品よりはホラーが半数を占めています。またヴァイオレンス系、サイコスリラー系も目立ちます。まぁ、そういうのもファンタジーといえば、ファンタジーか・・・。正確なジャンル分けって難しいですね。

そんな中、日本作品・日本関連作品は、以下の通り。


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2010年6月15日 (火)

『善き人のためのソナタ』 から、旧東ドイツをたどる

晴乃の総合評価:4.5(5点満点)

善き人のためのソナタ

現在私は、ベルリンの旧東ドイツ地区にあるプレンツラウアーベルクというエリアに住んでいます。少し歩けば街中の至るところに旧東ドイツ時代の名残を見つけることが出来ます。今回は、映画の舞台になった場所や、関連博物館などを訪れ、『善き人のためのソナタ』を通して、旧東ドイツの国家システム、“自由のなかった恐るべき監視国家”を見つめてみました。

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2006,ドイツ,アルバトロス・フィルム
©2007 ALBATROS Co., LTD. All Rights Reserved.


1.【あらすじ】

1984年、東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省局員(シュタージ)のヴィースラー大尉は、劇作家のドライマンと舞台女優である恋人のクリスタが反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。成功すれば出世が待っていた。あるとき盗聴器から流れてきた美しいピアノの音色を耳にする。それは、ドライマンが友人から「この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない」という言葉と共に贈られた、“善き人のためのソナタ”という曲だった。

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毎日盗聴を続けるうちに、予期していなかった感情がヴィースラー大尉の中に生まれ始める。彼らの世界に近づき、人間らしい自由な思想、芸術、愛に溢れた生活に影響を受け、監視する側であった彼に変化が生じる。いつの間にか今まで知ることのなかった新しい人生に目覚めていくヴィースラー大尉。監視相手の男女を通じて、これまで信じて来た国家に、初めて背くことに・・・。

エンタメーテレ最新ナビから引用)

2.【土屋的作品解説】

この作品は、強固な共産主義体制の中枢を担っていたシュタージ(国家保安省)という監視システムに初めてメスを入れ、その実態を克明に描いた歴史ドラマです。国家に翻ろうされた恋人たちや、芸術家たちの苦悩を浮き彫りにした問題作として、第79回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した傑作です。

シュタージは、1950年に創設された国家保安省であり、秘密情報機関として国内の反体制の人々を徹底的に監視し、摘発していた組織です。最終的には9万1000人の正規職員の他、約18万9000人の非公式協力者からなるシュタージネットワークが、1600万人の東ドイツ国民を24時間監視していたそうです。

親しい友人や愛する恋人、そして家族の中でさえも、反体制の人間を政府に密告していたといいます。その悲しい現実の数々が、、壁崩壊後に公開された 『シュタージ文書』 から明らかになっています。まさに、この作品の主人公ドライマンとクリスタの関係も、シュタージによって悲劇的な結末を迎えます。自分以外の誰も信じることの出来ない世界とは一体どれだけの息苦しさなのか、想像に及びません。人間の心を蝕み、懐疑心だけがはびこる社会が実際に存在したかと思うと、とても恐ろしいです。

壁が崩壊してから、17年という歳月を経てようやくドイツが世界に向けて、“監視国家”の実態を明らかにしたという事からも、いかに旧東ドイツ市民の心に、この監視システムが深い影を落としていたかということを感じます。そして、この悲しい過去を世界に公表していくことで、ドイツが新たに歩みだした証明でもあります。

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2010年4月29日 (木)

ベルリン映画博物館で感じたこと

いつも私がベルリンで映画を見に行く場所が、ポツダム広場。以前も書きましたが、ベルリン市内で唯一ドイツ語吹き替えをしていない、オリジナル作品が見られる映画館がこのポツダム広場のソニーセンター内にあるからです。詳しくは『ベルリンの映画事情』をご覧ください。


そのソニーセンターの一角に、ベルリン映画博物館があります。この博物館は主にドイツ映画の歴史、ドイツテレビの歴史と二つの大きな軸に分けて、最先端の斬新な展示方法で分かりやすく見せています。

私は映画のエリアを中心に見て廻ったのですが、じっくり観るとかなりの時間を要するほど内容の濃いものばかりが展示されています。

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