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2010年5月16日 (日)

ハート・ロッカー

晴乃の総合評価:4.0(5点満点)

『ハート・ロッカー』


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2010年3月6日よりTOHOシネマズ みゆき座、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開
2008,アメリカ,ブロードメディア・スタジオ
© 2008 Hurt Locker, LLC. All Rights Reserved.


大作や大本命と言われたライバルたちを蹴散らして、第82回アカデミー賞で作品賞や監督賞など6部門に輝いた『ハート・ロッカー』。その強さはどこにあったのか、今さらながら検証しました。

2003年から始まったイラク戦争を背景に、爆発物処理部隊のスペシャリストと、同部隊兵士達の任務や日常的にさらされた緊張感を終始手持ちカメラで映し出し、ドキュメンタリーのように実にリアルに描いています。その本物とも思える臨場感が、鬼気迫るイラク戦争の現状や兵士たちの精神状態を否応なしに伝えるため、出口のないトンネルを走り続けなければならない閉塞感さえ感じるのです。


私が心に強く残ったシーンが2つあります。1つは、前半シーン。兵士達がそれぞれにプライベートな事を語り合っている中で黒人兵が、『彼女が子供を欲しがっているけど、俺はまだいらない。欲しくない。』と語っていたのに対し、後半、命の危険にさらされ死というものを意識したとき、『息子が欲しい』という心情の変化がはっきりと描かれていたこと。人間は自分の人生に陰りが見えた時、子孫への執着に変わるのかもしれません。自分がこの世に存在したことの証を残して置きたいという最後のエゴが子供に託されるのだと私は感じました。


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もう1つ印象に残ったのは、無鉄砲な爆発処理スペシャリストの強者兵士が、任務が終わり自宅へ戻った時のシーン。我が子に向かって『(君は)パパもママもオモチャもみんな大好きだろう。でも大人になると大好きだったものが、好きじゃなくなる。パパが好きなものはひとつしかないんだ』と語るシーンです。


実に意味深なセリフの後、彼が再び爆弾処理の舞台へ向かうシーンに切り替わり、エンディングを迎えます。最初、彼のたった1つの好きなものは、もちろん家族であり、抱き上げている赤ちゃんだと思っていました。でも、すぐに切り替わった戦場に向かうシーンでの彼の後ろ姿を見て、ここに、彼の心の闇を見た気がします。


任務であるはずの爆弾処理で得る恐怖や興奮がいつしか彼に取り付き、怖いという感覚が麻痺し、非日常の世界の虜になっていく。そして仲間の指示を無視するような常軌を逸した行動を彼に取らせているのかもしれません。彼にとってもはや爆弾処理は快楽的仕事に変わっているんだとハッキリ確信した瞬間でした。


“ハート・ロッカー”の意味を脚本家Mark Boalが語った記事を読みました。“究極の苦痛にさらされる場所で、居るだけで心が痛む場所”だということ。


でもその場所はもしかすると居続けることで、痛いと感じる心を失い、人として大切な感情が完全に死んでしまうところなのかもしれません。そして、もはや彼のように、“好き”と言えることがたった1つ…戦いに向かうことだけだという皮肉な現実を感じました。


際限なく続く戦争。そこに自ら志願して任務を遂行する兵士たちの心の闇、恐怖心、深層心理にそっと触れるような映画で、CG効果など娯楽の要素は排除し、全くもって派手さのない文化的作品。だからこそ、作品の底力を痛烈に感じるんです。こりゃ、『アバター』が惨敗なのも頷けます。何より心に訴えてくる重みが違います。架空世界ではなく、現実世界に軍配があがったということですね。

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