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2010年1月22日 (金)

海角七号/ 君を想う、国境の南

晴乃の総合評価:3.5(5点満点)

『海角七号/ 君を想う、国境の南』

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2009年12月26日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
2008,台湾,ザジフィルムズ、マクザム
© 2008 ARS Film Production. All Rights Reserved.


この作品は好きです。好きだからこそ敢えて辛口に書きます。
まずは率直な感想を綴ると、本作品の宣伝用のVTRは見事に編集されていて、この映画は絶対に見なければ!とかなりの期待を持って観たのがいけなかったのか…、消化不良の感があるのは否めません。

テーマや題材、俳優陣は実に素晴らしいのに、脚本が今一つ陳腐でもったいないという印象を受けました。本当に残念です。もう少し違ったアプローチの仕方があっただろうと思うし、もっと2つの時代の2つの恋愛に重点を置くべきだと感じました。

1945年、敗戦した日本は台湾から撤退。そんな暗い時代の波に翻弄されながら、その影に日本人教師と台湾人の教え子の悲恋がありました。教師は帰国の船上で彼女への想いを手紙に綴ります。その恋文は情緒的で、切なくて、2人の間にどんな時間が流れていたのか、これまでどんな言葉が交わされたのか、私たち観客は思いを巡らします。その答えは映画の中には用意されていません。それは仕方ないとしましょう。多分、そこを曖昧にすることで映画を叙情的な作品に仕上げることが出来るし、それを芸術的だととることも出来ます。

ただ、この恋が成就しなかったことで、彼女の子供や孫に至るまで、何か大きな悲しみと歪みが生まれたことだけは、後半で明らかにされています。でもそれだけで、それ以外は最後まで全く謎に包まれています。この点は不十分過ぎます。
多くを語らず謎を残すにしても、ある程度の布石を置かないことには、無駄なシーンに感じますし、製作者の意図を汲み取るには、あまりにも情報が少なすぎます。

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物語は60年後の現在とリンクして展開していきます。台湾最南端の町・恒春で、歌手への夢を諦め悶々とした日々を送り、郵便配達のバイトさえまともにこなすことの出来ない阿嘉という若者にフォーカスします。そして日本人の友子というモデルとの恋愛を描いていくわけですが、この2人の結びつきがあまりにも唐突過ぎるし、恋愛関係に発展していくまでのそれぞれの心の変遷は軽んじられていて、全くといっていいほど描かれていません。現代的とでもいうのか、身体の結びつきを持ったから心まで結びつくというのではあまりにも短絡的だし、稀薄さを感じずにはいられません。60年前に時代や国を越えて想いを遂げられず別れなければならなかった2人と対比して、現代で結ばれる阿嘉と友子を描きたいのであれば、より2人の関係を丁寧に描写して欲しかった。付随する周りの描写を削ってでも、核となる2人をもっと深いところで描いて欲しかった。それがとても残念なのです。決してこの作品を否定しているわけではなく、台湾で数々の賞を総なめするくらいですから、出来映えは上々だとは思いますが、個人的にはとにかく『もったいない』が先行してしまう仕上がりでした。でも何度もいいますが、嫌いではなく好きな作品なのです。


ちなみに中孝介さんが、本人役で映画初出演を果たしていますが、観ていてこちらが照れ臭くなるほど初々しい演技です(笑)でも阿嘉と共にシューベルトの『野ばら』を熱唱しているシーンは、役者ではなく、歌手としてのオーラを放つ中さんでした。この作品の悲哀と希望の陰影に溶け込み、心に染み入る歌声でした。

そして何よりこのシーンは、60年前に引き裂かれた2人の想いが長い時を経てようやく結びつき、日本と台湾の関係を表している大切なシーン。静かな感動を与えてくれます。台湾人の監督がこんな風に好意的に日本を描いてくれるのは、日本人として嬉しいものですね♪

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