私は貝になりたい

監督:福澤克雄
原作:加藤哲太郎
脚本:橋本忍
出演:中居正広/仲間由紀恵/笑福亭鶴瓶/草なぎ剛/上川隆也/石坂浩二
フランキー堺の「私は貝になりたい」が基準になっている私にとっては正直、物足りなさを感じると共に、清水豊松の人間性や映画としての厚みを実感することが出来ませんでした。ただ、若い世代の視聴者はこういった戦争映画に興味を示さず、忌み嫌う人が多くなる中、今の日本の芸能界においてスーパースターである中居正広さんを起用することのメリットは大いにあります。「私は貝になりたい」という同名のタイトルではありますが、フランキー堺の作品とは完全に別物として鑑賞することをお勧めします。

(C)2008『私は貝になりたい』製作委員会
『私は貝になりたい』
配給:東宝
劇場:日劇3ほか全国東宝系にて公開中
公式HP:http://www.watashi-kai.jp/

スーパースターであるがゆえなのか、彼のキャラクターがあまりにも浸透しすぎて、清水豊松ではなく、最後まで中居正広から離れることが出来ず、泣き所であるはずのシーンの数々も入り込めず妙に冷めた気持ちでエンディングを迎えてしまいました。
私自身はフランキー堺主演の「私は貝になりたい」が基軸であり、小学生の頃あの作品をもって、戦争後の惨めで屈辱的で非情な出来事を知るきっかけとなりました。そして戦争という、人を狂気・狂乱に追い込む悲しく醜いことを2度と起こしてはならないんだと心に刻みました。
でもあの作品が今のこの日本で容易く受け入れられ、誰もが観る作品になることはないでしょう。そういう観点から言えば、この中居正広主演の「私は貝になりたい」が次世代への継承を担う役目を果たすことになるのだと思います。
映画の中で登場するセリフで「二等兵は牛や馬と一緒」という言葉がズッシリ痛くて、脳裏に焼きついています。牛や馬のように鞭で打たれ、罵声を浴びながら、ひたすら命令通りに動いた末端の人間が、敗戦したことによって、英雄ではなく死刑や終身刑を受ける犯罪者、ならず者と化す現実はあまりにも不条理です。戦争によって無残にも殺戮された人々同様に、手を加えた彼らもまた戦争という狂乱の世に生まれた被害者であることなど、この映画を通して考えなければならないことは数多くあると改めて認識しました。






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