ミスト

『ミスト』
監督・製作・脚本:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング
出演:トーマス・ジェーン/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ローリー・ホールデン/アンドレ・ブラウアー/トビー・ジョーンズ
初めて『ショーシャンクの空に』を観た時の興奮と感動、あの衝撃が忘れられません。そんなエンディングが存在するのかと、その予想を超えた結末に、時間が止まったようでした。あのスティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督がタグを組んだ『ショーシャンクの空に』から早14年。第2弾『グリーン・マイル』(1999)に次ぐ待望の第3弾がついに日本上陸! 人間は生まれながらに善人なのか悪人なのか……?! そんな人間の美醜をえぐりだす人間ドラマの集大成です。原作にはない、映画だけに用意されたラストは、全米では公開と同時に大論争が勃発したようで、日本でも間違いなく物議をかもすことになるでしょう。なんとも後味の悪いこと! 多くは語れませんが、このエンディングこそまさに自然の摂理であり、物事の道理なのかもしれません。後味の良し悪しは置いておくとして、エンディングのインパクトの強さだけでいえば、『ショーシャンク~』を越えています。

(C)2007 The Weinstein Company.All rights reserved.
『ミスト』
配給:ブロードメディア・スタジオ
公開:2008年5月10日
劇場:有楽町スバル座ほか全国にて
公式HP:http://www.mistmovie.jp/

激しい嵐の後、街には正体不明の“霧”が襲ってきます。その霧はみるみるうちに街を覆い尽くします。やがて人々は霧の中にいる得体の知れない“何か”によって恐怖心を募らせ、理性を失い、出口のないトンネルに極限状態を迎えます。思考力をなくした人間によって絶望的な無法地帯と化していくのです。
人間の平常心や慈悲の心は、平和で危機感の無い守られた状況にこそ存在するもの。人間は生まれながらにして悪人なのかもしれない。そう思わざるをえないシーンの数々に絶句します。
荀子の性悪説が頭をよぎりました……。
「人間は本来、悪だから宗教と政治があるんだ」という劇中に出てくる言葉に、うなだれてしまうかも。
正しい人間だけが救われるわけでもなく、悪人が処罰されるわけでもない。この“霧”の存在は、どんな人間の上にも降り注ぐ、私たちの人生における“恐怖そのもの”のような気がします。例えば何か大きな挫折だったり、失業、失恋、病気など、それらはいつも隣り合わせで存在し、晴天だった日常にある日突然現れる、とてつもなく恐ろしい得体の知れない敵。
人はその敵とどう対峙するのか。ある者は耐えられず自殺し、ある者は必死に戦い、ある者は宗教に狂信し、またある者はパニックに陥りただただ逃げ惑う。
でもこの映画から分かることは、必死に逃げても、必死に戦っても、結局最後の最後で諦めた人間には絶望しか残されていないということ。どんなに前の見えないトンネルの中にいても、背水の陣だったとしても、希望だけは持ち続けなければならないということです。エンディングで、車に乗り込む5人の中に、人間・人生の縮図を見る思いがしました。血縁のない、いってみれば赤の他人。そんなおじいちゃん、おばあちゃん、女、男、そして男の唯一の血縁である子供。老若男女が一つの車に乗り込み、霧の無い平和な場所を目指してガソリンが持つ限り突き進もうとしたこのシーンには、間違いなく旧約聖書の「ノアの方舟」を連想させる意図が働いているはず。しかしノアの方舟のように難を逃れられないのは、神に背いて愚かな判断を下してしまう人間が招いてしまったもの……。
この映画と旧約聖書との密接な関わりはさることながら、描写や言葉に多面的な意味を含んでいることにも是非とも注目してくださいね!

You are ahead to town by chance, aren’t you?
街に行くなんてことあるかね?
They are in a hurry.
あいつら急いでいるな
Love you Billy, more than anything.
ビリー愛しているよ、何よりもね






土屋さん、はじめまして。同業者です。早速ですが、車に乗り込み5人で逃げていくシーンの考察、素晴らしいですね。ノアの方舟はなるほどと納得の批評でした。
こちらのブログは時々参考に拝見しております。テレビや執筆と多岐に渡ってのご活躍、大変刺激になります。
お互い、いい映画を少しでも世に広げるべく邁進しましょう!また遊びにきます。
投稿: 時任 | 2008年3月24日 (月) 17:04
時任さん
はじめまして(・∀・)ノ
とても嬉しいお言葉を頂きましてありがとうございます!
まだまだ本当に映画の知識が希薄なので、日々勉強です。これからも少しでも映画に関わるお仕事が出来るように精進します!
遊びに来て頂けて大変光栄です。。。
投稿: つちやはるの | 2008年3月26日 (水) 16:47
こんばんは!
フランク・ダラボン最新作を早速の観賞ですね!羨ましいかぎりです。おいらも若い頃に「ショーシャンクの空に」を観賞して興奮した口なので。ああおいらの言いたいことや価値観が全て描かれてる作品があるなんてと、観賞当時嬉しくなったものです(笑)。因みにおいらにとっていまだ一番大切な映画のまま。
そんなわけなので本作の公開を待ち望んでおりましたが、例の如く待ってられないので、原作を先に読んでしまいました。これをダラボンが映画化するの?と少し首を傾げていのたですが、晴乃さんの感想を読むに、見事にダラボンらしい映画になっているようで安心しました。
ラストが変更されてることは初めて知りました。どんな風に脚色されているのか楽しみでなりません。
それではまた遊びに来ます。春なのにおいらのまわりは風邪ひきばかりです。お体にはどうぞお気を付け。ではでは
投稿: たま | 2008年3月28日 (金) 18:41
たまさん
こんにちは。原作読まれたんですか!すごいっ☆私は大抵の場合、映画から入ってしまうので、なかなか原作と比較したレビューを書くことができません。。。たまさんを見習わなければいけないです(><)
「ショーシャンクの空に」のエンディングの方がもちろん明るく晴れ晴れとしていて好きですが、この作品はあまりに暗い現実に直面するものの、やはり衝撃を覚えるラストでした。
御覧になった感想もお待ちしていますね!
投稿: つちやはるの | 2008年3月30日 (日) 21:27
はじめまして、
アメリカで観ましたが、最後は鳥肌が立ちました。
今の世界の縮図をスーパーの中に凝縮しているような気がします。
投稿: かめ | 2008年4月14日 (月) 09:51
いや~、毎回、土屋さんのレビューには、ゾクゾクされられます。
ところで、以前にも「ザ・フォッグ」というタイトルの、
霧を題材にした映画を観たことがあります。
内容は、ほとんど憶えてないけど(^~^;)ゞ
「ミスト」のタイトルだけを見て、
またどーせ、同じような映画だろって思ってましたが、
土屋さんのレビューと皆さんのコメントを読んで、
おぉ、まったく別物らしいゾ、ということが分かりました。
公開日が待ち遠しいです。
投稿: カズソゼ | 2008年4月16日 (水) 10:58
>かめさん
はじめまして☆
コメントありがとうございます。
本当に最後が衝撃的ですよね・・・。
>カズゾゼさん
いつもお立ち寄りいただいているようで、ありがとうございます。
『ミスト』は、最初私もC級っぽいなぁ~なんて思っていました。
しかも途中、CGを多用した怪物が登場した時には、『うわぁ~やっちゃった……』なんて落胆したんです。
でも全てはラストに集約されていて、ラストでこの映画の格調
を完全に変えたと言ってもいいほどですよ。
投稿: つちやはるの | 2008年4月21日 (月) 02:24