ヒトラーの贋札

『ヒトラーの贋札』
国家による史上最大の贋札事件「ベルンハルト作戦」。ナチスドイツから紙幣の贋造を強制されたユダヤ系技術者達の苦悩と葛藤を描いた傑作。「真の正義」とは何かを考えされられる映画です。
監督・脚本:ステファン・ルツォヴィッキー
出演:カール・マルコヴィクス/アウグスト・ディール/デーヴィト・シュトリーゾフ/アウグスト・ツィルナー/マルティン・ブラムバッハ
公開:2008年1月19日
配給:クロックワークス
劇場:シャンテ・シネにて
公式HP:http://www.nise-satsu.com/

第二次世界大戦中のドイツ・ザクセンハウゼン強制収容所には、各地の収容所から送られてきたユダヤ系の技術者達が勢揃いします。世界的贋造犯であるサリー、印刷技術者ブルガー、画学生のコ-リャなど、彼らの才能とあらゆる技術を駆使して、「完璧なポンド札の贋造」を強制されます。もちろん、造れなければ「死」が待ち構えているのです。
次第に、この贋札工場の中には、“二つの正義”が見え隠れするようになります。一つは、サリーが掲げる「正義」。それは、ナチスからの指示通り、完璧な贋札を作り続けることで、工場の人々(仲間)と共に、一日でも長く生き延びること。
そして、相反するもう一つの「正義」は、ブルガーの掲げる「正義」。贋ポンド札を造り続けるということは、イギリス経済に打撃を与え、ナチスドイツの戦況を有利にし、手助けすることになるのです。ナチスに手を貸すことを拒否することが、ユダヤ民族に対する正義。ブルガーは「ナチの金は刷れない」と作業を妨害するようになります。
ブルガーの正義はユダヤ人のための正義ではありますが、それは一方で必然的に工場内の人々の死を導くものなのです。サリーの正義は、ユダヤ人にとっての正義ではなく、自分と小さな工場内の仲間を救うに過ぎない正義です。
ただ、この二つのどちらの正義が正しいのか、それを問うことは愚問のような気がします。エンディングでサリーとブルガーがアイコンタクトを取り、小さく頷いたシーンに注目して下さい。この映画の最大の見所であり、言葉を交わさずともはっきりと伝わる、彼らの中の「和解」、「友情」を感じるはず。お互いが双方の思いを知りながらも、それでも自分の信じる「正義」を貫こうとした男たちの、確固たる信念を見た気がします。






コメント