「他人の困難をリスペクトすれば、社会はもっとうまくいく」『奇跡のひと マリーとマルグリット』主演女優アリアーナ・リヴォアール来日会見リポート


6月6日公開の映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』の主演女優アリア―ナ・リヴォアールが21日、都内で来日記者会見に出席した。

同作品は19世紀末のフランスに実在した“三重苦”の少女マリー・ウルタンと、彼女を教育したシスター・マルグリットという実在した2人の奇跡の実話を映画化。自身も聴覚にハンディキャップをもつリヴォアールが作品のPRとともに、今回、洋画としては初めて実施されるバリアフリー上映普及のためのクラウドファンディングや、フランスでのバリアフリー上映の反響などについて言及した。

製作国であるフランスでは、長編映画として初めて全国の映画館でフランス語字幕付きの上映を行い、大成功を収めた今作。日本でもその成功例を受けて、日本語版吹き替えと音声ガイダンスをつけたバリアフリー上映版を製作することとなった。

■松田高加子氏(バリアフリー版制作会社・パラブラ株式会社):映画のバリアフリーとしては、目の不自由な人には音声による解説ナレーションを劇場公開時には、希望する方にイヤホンで聞くような形での提供を行います。障がいのある人たちにも映画を楽しんでもらおうという意味で2000年代初頭から実施されましたが、外国映画の音声ガイダンス付き映画はいまだ立ち遅れています。

邦画の音声ガイダンス付き上映を行う場合には、ある程度の告知ができれば、一定数の視覚障がい者の方々の来場が見込めます。映画は娯楽としての楽しみだけでなく、外国の文化を知ることができるなど、様々な楽しみ方がありますので、バリアフリー版によって皆様に楽しんでいただけるようになると良いなと思っています。

リヴォアール:皆さん、こんにちは。私はアリアーナ・リヴォアールです。主人公のマリーを演じています。私はろうですので、私のアイデンティティである手話を言語として今日は皆様にお話をさせていただきます。

この映画の重要なメッセージは、この映画は私のようにろうであるとか、バリア(障がい)をもった人たちにも観てほしいということです。フランスでは、本作をフランス語の字幕付きで観ていただくことができたんです。そのためにジャン・ピエール・アメリス監督は、様々なところに掛け合って、大変な努力をしました。皆さんに、そんな風にバリアフリーで観ていただく、違いをもっている人も含めて皆さんに楽しんでもらうのが映画という娯楽だと、私は思います。

フランスで字幕上映を実現するために、監督は非常に尽力しました。だから彼はフランスの映画市場でもパイオニア的な存在になりました。この映画の撮影現場でも手話通訳でのコミュニケーションを完璧にする、手話通訳を通すことで、ろうの人たちが撮影に参加することができると示しました。また、ろうあの人には触手話を通して、障がいをもつ人も平等に映画を観られることを実現しました。人間はそれぞれ困難をもっている、違いももっている。でも映画というものの前では、皆が平等に楽しめることが大切だと思います。

たくさんの人たちが均等に機会をもらえるという、アメリス監督の尽力のもとにそのようにアクセスできたことは素晴らしいことです。この方法が、フランスのパイロットモデルとして世界中に広がっていくことを私は祈っています。

この映画に出演しようと思ったきっかけを教えてください。

リヴォアール:人生の中では、自分たちの進む道にはいろいろな障害がありますね。そういうことは誰にでもあると思うのですが、私の場合は今回アメリス監督が、私にこの映画に作品に参加する素晴らしい機会を与えてくれました。私自身も、ろう者のための活動家のような気持ちをもっています。

私たちのように障がいをもっている人々は、檻に閉じ込められたような人生は送りたくないと思っているのです。学生である私が映画に出るには勇気が必要でしたが、マリー・ウルタンという実在した人が障がいを乗り越えたということを伝える映画なので、私が出演する意味があると思いました。

それまで、女優になりたいと思ったことはなかったですが、映画『奇跡の人』を観た時に、障がいをもちながら戦っている人々に共鳴をもっていましたから、監督に「映画に出ないか」と言われた時は、夢を叶えたという感じではなかったですが、チャンスがやって来て、私はそれをつかんだと思いました。

フランスでもバリアフリー上映は珍しいということですね。あなた自身は、これまで映画館で映画を観る機会は多かったですか?

リヴォアール:フランスではろう者に対するリスペクトが足りない気がしています。ろう者から「字幕をつけてください」という欲求はあるけれど、実際にはあまり字幕を付けてはもらえません。だから、ろう者としてはあまり映画館には行くことができないのです。

そういうわけで私たちは、映画を観るにはDVDが出るのを待たなければならないのです。でもそれで字幕があれば良いですが、今度はあったとしても字幕のクオリティ自体があまり良くなんです。もし字幕が付いていたり、しかもちゃんとした字幕が付いていれば、私たちはもっと頻繁に映画館に行くと思うし、DVDもたくさん観ると思うんです。映画は皆にとっても現実ですが、「皆」という中にはろう者や盲の人も入っていますよね。でも障がいのある人が観るなら、健常者と違う場所や違う方法でというのは、少し違うのではないか、と思います。

私自身は、他人のもっている困難さをリスペクトするようになれば、社会はもっとうまくいくし、そこにお金がかけられればもっと良い世の中になるのではないかと考えています。

映画の撮影中に感じたことはどのようなことでしたか?

リヴォアール:人間は誰でも、困難の前では平等というか、困難は誰にもありますよね。仕事がうまくいかない、コミュニケーションがうまくいかない、勉強ができないなど。マリー・ウルタンの場合はコミュニケーションがとれないという困難で、彼女をその悩みから救い出してくれる人を待つしかなかったのです。

彼女には幸いマルグリットという修道女が現れて、救ってくれました。マリーの役は、実生活で私自身がコミュニケーションの困難を経験していたからできたと思います。美容院やパン屋さんに行くにしても日常生活の中で、なかなか私の要求していることが分かってもらえないことがあります。私たちろう者にとっては、皆さんが理解してくれないことがさらなる困難になってしまうのです。そんなことを理解していただけたらと思います。
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『奇跡のひと マリーとマルグリット』

2015年6月6日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
配給:スターサンズ、ドマ
公式HP:スターサンズ、ドマ
©2014 - Escazal Films / France 3 Cinema - Rhone-Alpes Cinema

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