『9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~』シェーン・アッカー監督 インタビュー


『9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~』シェーン・アッカー監督 インタビュー


古びた研究室で、麻を縫い合わせて作られた人形が目を覚ました。腹部には大きなジッパーがつき、背中に「9」と書かれた彼は、自分が誰なのかも分からない。外を見ると見渡す限りの廃墟が広がっていた。茫然としていると、背中に「2」と書かれた自分と似た人形がやってきた。2は、壊れていた9の発声装置を直し、自分たちは仲間だと語りかける。
2005年アカデミー賞短編アニメ部門にノミネートされた作品が、80分の長編作品として生まれ変わった。そもそもは、監督のシェーン・アッカーが、映像を学んだUCLAの卒業制作として完成させた11分の短編アニメ作品だったのだが、鬼才・ティム・バートンが惚れ込み、彼が出演を呼びかけた豪華キャストにより、世界的に公開される作品に仕上がったのだ。麻で出来た奇妙だけど愛嬌のある人形や人類滅亡後というダークで悲哀に満ちた世界観は、ティム・バートンとも共通するものがある。声の出演は、イライジャ・ウッド、ジョン・C・ライリー、ジェニファー・コネリー、マーティン・ランドーほか。

今回は本作の監督であられるシェーン・アッカー氏にお話を伺いました。

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監督はパペットアニメが好きなのでしょうか?またCGアニメーションなのに、パペットアニメのようなニュアンスはどのように演出をされたのでしょうか

■シェーン・アッカー監督(以下、アッカー監督):「元々パペットアニメが大好きなんだ。その有機的で命を感じられる資質に惹かれているんだと思う。短編を手がけていた頃のCGアニメーションはとても冷たくて、プラスティックのようで、リアルに思えないようなものばかりだったんだ。だから、そのようにはしたくなかったんだよね。
そして、本作ではキャラクターに歴史を感じられるようなリアルな存在にする事によって、観客がすんなりとこの世界観に入れるように心がけたよ。
話は変わるけどパペットアニメってちょっと怖いよね。それは人形にイノセンスをみるからなんだと思う。子供のような無垢さを象徴しているから。「9」のキャラクターもそれをふまえてキャラクター作りをしているんだ」


なぜ9体しか登場しないのですか?

■アッカー監督:「色々とコンセプトはあったんだけど、10が完璧で、1つごとにバージョンアップすると仮定する。すると、人間は必ず欠陥があるからどうしても10まではいかないんだよ。
だから人間を象徴しているパペット達だからこそ、9体しかいないんだよね」


麻布で作られたキャラクター、そしてメカニックな敵キャラクターの対比が印象的でした。そして背景の造形が素晴らしいと思いました。そこにはどのようなコンセプトがあったのでしょうか?

■アッカー監督:「キャラクターコンセプトについて、登場するキャラクターは全てあの世界で作られた。だから、残された残骸から作られているというのを意識したよ。それと同時にマシン達と主人公達を区別したかったので、マシンは金属を多く使い、鋭く硬いイメージで、主人公達は丸みがあって麻布で。主人公達はある意味新しい人類の形だから、皮膚ではないけど我々と同じ様な柔らかさを持たせたかったんだ。そしてお互いが対峙した時に、布で覆われている方が観客が感情移入しやすいと考えたからなのもあるよ。

そして、背景などの絵画的なビジュアルはかなり意識的に取り入れている。あれは本当に絵画から影響を受けているんだ。ポーランドのズジスワフ・ベクシンスキーはその中のひとりだね。彼のホラーファンタジー系の雰囲気を本作には求めた。ただそれをCGで作るのには限界があったんだ。
そこで今回は2Dのアーティストにも参加してもらい、本当に絵を描くように背景を描き、それをコンピューター上で計算し立体的に見えるように作ったんだ。だからある意味絵画的な作品なのかもしれないね」


制作にティム・バートン(『アリス・イン・ワンダーランド』)、ティムール・ベクマンベトフ(『ウォンテッド』)が参加されていますが、彼らとはどんな会話をされたのでしょうか?また彼らが入ったことで、本作にどのような変化があったでしょうか?

■アッカー監督:「彼らはゴット・ファーザーみたいな存在で(笑)。ほんとに短編が出来上がった頃くらいに制作に参加表明してくれたんだ。2人ともとても強いビジュアル感覚を持った映画作家で、特にティムールはアクションの演出が美しく、個性的で、本作では彼のアクションを模倣ではいけど、それに近づけるように作った部分はあるね。
そして彼らは無駄に映画作りに介入するわけではなく、スタッフたちが作りたいものを作れる環境作りをしてくれたんだ。僕自身が本当に作りたい作品へと導いてくれたよ。
実は“6”のキャラクターはティムの初期作品へのオマージュなんだ。リスペクトを込めてそうさせてもらったよ」


次回作のご予定は?

■アッカー監督:「最初にアニメーションをやったので、またアニメーションをやりたいね。でもインデペンデントの現場は色々厳しいし、アメリカで求められるアニメは結構限定されたものが多いんだ。だから本作のような作品を作れるとは夢にも思っていなかったんだよ。だからアメリカにおけるアニメーションの意味合いを広げられる作品を作りたいとは思うね。
それと同時に実写の話も進んでいて、SFとかの話もきているんだけれども、僕の核にあるのはデザイナーで、本当にやりたいのは世界を1から作る“ワールドメイキング”なんだ。一見すると異質な世界観に、どこかリアルなキャラクターを登場させる事によって、観客に楽しんで貰える様な作品を作っていきたいね」

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『9 <ナイン> ~9番目の奇妙な人形~』
2010年5月8日 より 新宿ピカデリーほか全国にて
配給:ギャガ
公式HP:http://9.gaga.ne.jp/

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