鳩山首相にも観てほしい!!『インビクタス/負けざる者たち』トークショー

日時:1月26日(火)
主席者:司会・寺中誠(国際人権救援機構アムネスティ・インターナショナル日本事務局長)、竹田圭吾(ニューズウィーク日本版編集長)、池田香代子(「世界がもし100人の村だったら」再話者)

鳩山首相にも観てほしい!!『インビクタス/負けざる者たち』トークショー

『硫黄島からの手紙』『グラン・トリノ』クリント・イーストウッド監督の記念すべき監督第30作『インビクタス/負けざる者たち』。ネルソン・マンデラ大統領(モーガン・フリーマン)が、南アフリカラグビー代表チームのキャプテン、フランソワ・ピナール(マット・デイモン)と共に、自国で開催されたワールド・カップを通じて国を、国民の心を“ひとつ”にしようとした感動の実話。

本作の公開を記念して、国際人権救援機構アムネスティ・インターナショナル日本事務局の寺中誠局長が司会を務め、テレビ番組「とくダネ」などでもお馴染みのニューズウィーク日本版編集長の竹田圭吾氏、「世界がもし100人の村だったら」の再話者、池田香代子氏によるトークショー付き特別試写会が開催された。

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竹田氏はマンデラついて、「(マンデラは)仏様みたいな存在ではなく、国家の中長期的発展のために人種間の融和を優先した究極のリアリスト」とコメント。

イーストウッドについては「(現状の南アフリカと比較して)15年前、あんなにうまい具合に人種間融和を実現したのに、この現状はなんなんだという監督の皮肉が込められている気がする」という持論を語った。

池田氏は「鳩山首相にもこの映画を観てほしい!『グラン・トリノ』では文化、民族を異にした人たちが、心を許しあい、ひとつのコミュニティを作っていくというテーマを打ち出した。『インビクタス』ではコミュニティどころか国家をテーマに掲げてしまった。イーストウッドは、心を許し合ってゆく過程、特に最初のギクシャクした段階を描くのが本当にうまい」と本作の魅力について語るなど、映画を通して南アフリカの現状、マンデラについて語る、有識者ならではの濃密トークを展開した。


■寺中:映画で描かれている“ラグビー”というスポーツですが、そもそも人種差別の象徴なのでしょうか?

■竹田:ラグビーは白人のスポーツ、サッカーは黒人のスポーツという区分けが一般的にあるが、それは人種差別的な要因ではなく、むしろ貧富の格差により、体格の違いが生じ、文化的にたまたま自然にそう分かれたのです。(この映画で描かれる南アフリカは)アパルトヘイトの制裁により、代表チームは世界では戦えなかった。(1994年のアパルトヘイト撤廃により)1995年のワールドカップが初めての出場となるわけです。

■寺中:ところで、マンデラは基本的には「非暴力」主義なのですが、現実的に暴力の行使はやむを得ないという方針をだしたことがありまして、それを受けて大激論があった。この映画にあるような刑務所の生活を経て大統領になったマンデラは、「さあ、これからこの国をどうしていこうか」ということだったと思います。この映画でも、マンデラのそういう事を描いているんじゃないかと思います。竹田さんはその点今回の映画をみてどう思いましたか?


■竹田:偉い人をヒーローに描く映画はあんまり好きじゃないんですね。嘘っぽくて。 でもこの映画に出てくるマンデラは、白人に対する赦しっていうのがテーマになっていると思うんです。ただ、マンデラさんは“究極のリアリスト”だと思います。これは僕個人の印象ですが、白人のことを仏様みたいな慈悲の心で許すのではなく、もっとドライに、究極のリアリストとして、「融和政策をとることが一番国家の中長期的発展のために有効なのだ」という考えがあったのだと思います。まず最初に「人種間の融和」があり、そのあとに初めて「経済の発展」や「インフラ整備がある」と。その「融和」の為になにか良い象徴になるものはないかと考えた時に“ラグビー”に目をつけたのが、マンデラさんのすごいところだと思いますね。

ワールドカップというのは、国をまとめるにはすごく便利なツールだと思います。2002年の日韓ワールドカップのように。よく「戦争をやめさせるには宇宙人に侵略してもらえばいい」と言いますが、そういうナショナリズムに火をつけて短期的にまとめ上げるのに、ワールドカップは非常に都合がいい。その意味でもそこに目をつけたマンデラさんは本当にすごい人です。


■池田:マンデラさんは私もすごくリアリストだと思います。だって、黒人の人々は教育も受けることができなかったので、行政や経済というもののマネジメントができない。だからそれができる白人の協力は絶対必要だったんです。ひとつのチーム、ひとつの国というキーワードがこの映画にも出てくるけど、いろいろつべこべ言っているヒマはないと。リアリストとして「融和」を最優先させた マンデラは本当にすごいと思います。

ほんと、だからこの映画、鳩山さんに観て欲しいなと思います(笑)。

■寺中:ある意味、この映画では究極の”究極の友愛“が描かれてますね。この映画ではラグビーを通して描いていますが、こういったマンデラの「融和」へ向けたプロセス。これはどうお考えでしょうか?

■池田:まずこの映画を観て私は前作『グラン・トリノ』を思い出しました。『グラン・トリノ』では文化、民族を異にした人たちが、心を許しあい、ひとつのコミュニティを作っていくというテーマを打ち出した。『インビクタス』では コミュニティどころか国家をテーマに掲げてしまった。イーストウッドは、心を許し合ってゆく過程、特に最初のギクシャクした段階を描くのが本当にうまいですね!この映画でも最初はそのギクシャク感に「プッ」と吹き出すところがいっぱいあって。 だから「融和」のプロセスも、映画として楽しめるところでもありますね。

■寺中:一度は「融和」を掲げたマンデラ大統領によってひとつになったと思われた南アフリカ。だが現在の南アフリカの現状はとても厳しい現状についてはどう思いますか?

■池田:この映画で描かれているように、南アフリカは一度短期的に結束するということを体験しているわけですから、(現在の南アフリカも)もう一度初心に帰ってその時のことを思い出すべき。そのために、この映画は南アフリカの子どもたちが観るべき映画だと思います。もちろん厳しい現実をこの映画で覆い隠せるとは全然思えない。(ラグビーでの結束は)過去にポッカリ咲いた蓮の花のようなものかもしれない。でも蓮の花は現実に一回咲いたんです。だから思い出して欲しい。この映画は現在の南アへの最高の贈り物だと思います。

■寺中:おっしゃる通り、現在の南アは大変厳しい状況にあります。その辺はNEWSWEEK編集長の竹田さんに語っていただければと思います。

■竹田:失業率は25~30%と言われています。今は黒人間の貧富の格差がひどくなっています。豊富な資源を武器に流入する外国からの投資を、うまい具合にかすめ取っているグループと、そうでないグループの差。所得分配が機能していないのでその差が埋まらない状態です。だからこの映画のメッセージも、「15年前あんなにうまい具合に融和を実現したのに、この現状はなんなんだ」というクリント・イーストウッド監督の皮肉にも思えます。

■池田:私もそう思います。この映画の「融和」というメッセージは、南アだけの問題ではないです。グローバル化が進んだ21世紀の世界全体に向けてのメッセージだと思います。あるシーンを見た時私は、「この映画は9.11同時テロ以降を生きなければならない私たちへの究極の贈り物だ」と思いました。

■寺中:この映画をご覧になったあとにみなさんは「では今の南アはどうなっているんだろう」ときっと思うと思います。正直言って状況は決してよくありません。その外にいる、日本に住んでる我々がなにができるかということを考えてもらえれば幸いです。

■竹田:(思い出したように)モーガン・フリーマンが演じる、ネルソン・マンデラはすごく上手いんですよ!

■池田:マット・デイモンも本当のラガーマンにしか見えなかったです!(笑)


<池田香代子 プロフィール>
2001年9月11日、アメリカで起こった大惨事を機にアメリカがアフガニスタンに侵攻したことを受けて『世界がもし100人の村だったら』を出版し、人々の“平和を願う”意識を呼び起こし、ベストセラーとなる。その印税で「100人村基金」を立ち上げ、NGOや日本国内の難民申請者の支援を行っている。

<竹田圭吾 プロフィール>
慶應義塾大学文学部史学科卒業後、スポーツ雑誌の記者として、アメリカのプロスポーツの現地取材多数。1993年にニューズウィーク日本版編集部に入り、国際情勢、アジア経済、社会問題などを取材。1998年に副編集長、2001年に編集長となる。現在、「情報プレゼンターとくダネ!」(フジテレビ)、「ジャーナる!」(フジテレビ)、「やじうまプラ
ス」(テレビ朝日)レギュラーコメンテーターなどを務める。

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『インビクタス/負けざる者たち』
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:2010年2月5日
劇場:丸の内ピカデリーほか全国にて
公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/invictus/

©2009 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

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